讃岐うどんに「コシ」はなぜ必要か~「コシ」が生まれた理由~
讃岐うどん店の店主さんに取材しますと「コシ」という言葉が100%出て来ます。「コシ」とは何なのでしょうか。讃岐うどん最大の謎「コシ」について、まとめてみました。
讃岐うどんの「コシ」はどういうもの~讃岐うどん最大の謎「コシ」に迫ります~
ーー踏むことで生まれる「コシ」。
讃岐うどん店の店主さんへ「うどんづくりで一番大切な工程はどこですか。」と聞くと、その回答の多くは「全部」と仰られることがほとんどです。
特に古くからの製麺所系の職人さんたちは「踏み」と答える方がほとんどでした。
製麺所は出来立てのうどんを振る舞うのが主でなく、うどんの品質をある程度持続させなければいけません。「踏み」の工程は讃岐うどんの「コシ」を生み出す大きな要因であることは間違いなさそうです。
また、「踏み=鍛える」という表現をされます。讃岐うどんの「コシ=強い弾力」を生み出すために、「踏んで鍛える」ことが基本と言えます。
→讃岐うどんは足踏み禁止?過去にあった「足踏み問題」を簡単に振り返ります。
ーー「コシ」と「踏み」の関係は。
「踏み」の工程で「グルテン」といわれる組織が活性化されるそうです。
「グルテン」は2種のたんぱく質から成り、水で捏ねたり、刺激(圧)を加えることで網目状の弾力性を持つ組織が誕生します。「グルテン」の面白い特性は外部から適度な力を加えると押し返して戻ろうとする力が生まれることです。
力を加え続けて鍛え続けると、網目状の組織が密となり、強くなります。これが讃岐うどんの「コシ」の正体でともいわれます。
→【取材】もり家の森田社長に讃岐うどんのこだわりとエッジについてお伺いしました。
ーー「踏み」の難しさ。
うどんづくりはすべての工程で気が抜けませんが、大切な工程であるという「踏み」。
なぜ、「踏み」が大事かといいますと、踏みが足りないとうどんに弾力が生まれず、噛むと押し返すような力強さがうどんにあらわれないそうです。さらに踏み過ぎると、網目状の組織であるグルテンは破壊され、元の状態に戻ることは極めて少ないようです。
つまり、踏みが足りないと「コシ」が出ず、踏み過ぎると逆に「コシ」は失われて、うどんづくりは失敗してしまうんですね。
職人さんの経験値から来る力加減がとても重要な工程です。
ーー讃岐うどんに「コシ」が必要な理由。
なぜ、踏み鍛えて「コシ」のある讃岐うどんを作らなければいけないか。
大正時代以前は基本的に、うどんという食べ物は農家の方たちが頻繁に食べる日常食だったそうです。外食産業として、製麺所や食堂でうどんが振る舞われる記録があるのは、大正時代からです。(※諸説あります)
さらに第二次大戦後の数年間の間に、香川県ではうどん店の出店数が急激に増えます。
当然、競争も激しくなります。当時の主流だった製麺所は時間が経過しても、美味しいうどんを卸先に提供しなければ競争に勝つことが出来なくなります。うどんを一層、踏み鍛えることで、茹でた後のうどんの劣化と麵が伸びることを遅くすることを意図的にやっていたようです。
その鍛えられた「コシ」のある讃岐うどんを食べ続けていた香川県民はそれが当たり前になったのかも知れません。
ーー「コシ」を楽しむ讃岐うどん。
現在、讃岐うどんは地元の方や観光客等、色々な方に楽しまれています。
讃岐うどんが、讃岐うどんたる所以の大きな理由のひとつに「コシ」があるということは間違いありませんね。強い弾力と噛み応えのある、「コシ」のある讃岐うどんはこのような背景から生まれたと妄想しています(笑)。
お読みいただきありがとうございます。
〇当記事は下記書籍から引用させて頂きました。
書籍名:だから「さぬきうどん」は旨い
発行日:2009年6月発行
著者:吉原 良一
制作者:永瀬 正人
発行者:早嶋 茂
発行所:株式会社 旭屋出版
この記事を書いた人
アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/
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