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讃岐うどん CLAPクラップ

高松市円座町「マルタニ製麺」~讃岐うどん今昔物語~

2022.01.07

高松市円座町にある「マルタニ製麺」さん。

近所の常連さんから県内のうどん通にも幅広く人気の老舗讃岐うどん店。今回は2代目の谷本浩司(ひろし)さんにお話しをお伺いしました。

高松市円座町「マルタニ製麺」~讃岐うどん今昔物語~

ーー創業は雑貨屋。

元々は円座町のこの場所で、私のおばあちゃんが塩やタバコを扱う雑貨屋さんを営んでいました。その後、親戚からのすすめもあり、私の母親が昭和51年にうどん屋を始めました。

それが製麺業としての創業と言うことになりますかね。

父親はごく普通のサラリーマンでしたので、店自体は主に母親が切り盛りをしていました。

当時はお店もお客さんでごった返して、活気があったように覚えています。

実家がうどん屋さんというのは幼いころから慣れ親しんだ光景でしたが…まさか自分が後を継ぐとは思っていませんでしたね。

うどん作りについて、技術を習ったというよりは、見様見真似でうどんの作り方を覚えていった感じでした。

※写真は「マルタニ製麺」の外観です。

※お馴染みの谷の文字に◯の看板、老舗の趣を感じます。

※写真はマルタニ製麺の外観です。

※行列ができるほど人気のマルタニ製麺さん。

 

 

 

ーー創業から変わらないうどん業。

毎日の仕込みやスケジュールというのは基本的に昔から変わっていません。

毎朝5時半頃から仕込みを始めています。当店では仕込みを分担制で行っています。家内は出汁を作ったり、天ぷらや寿司の担当をしています。

私はうどんの仕込み全般で練り込みをし、その日に打ちます。お客さんには出来たてのうどんを食べてもらいたいので、作り置きはしないようにしています。

※写真は「マルタニ製麺」の仕込み風景です。

※毎日の仕込みは朝の5時半からはじまります。

 

 

 

ーー香川県で朝ごはんといえば「うどん」。

香川県では、うどんは「朝ごはん」とも言えますよね。

讃岐うどんの形態は他の県にはない独特な存在です。香川県民にとっては、生活に密着した、身近な食べ物です。

ご近所の常連さんは、朝食代わりに当店のうどんを召し上がって頂けます。おかげさまでお昼前から途絶えることなくお客様がお店に足を運んでくださいます。

その時にね。、常連さんとほんの一言二言のコミュニケーションが嬉しいんですよね。来て頂いて当たり前になっていますけど、改めて常連さんに毎日、食べに来てもらえているというのは本当に幸せで恵まれている…感謝しかないですよ。

※写真は「マルタニ製麺」のかけうどんです。

※飾り気のない、シンプルな「かけうどん」。常連さんやうどん好きが求める一杯。

※写真は「マルタニ製麺」の肉うどんです。

※肉の旨味がしみ込んだやさしい味の肉うどんです。

※写真はマルタニ製麵の肉うどんです。

※透き通った出汁がさらに旨味を増します。

 

 

 

ーー「マルタニ」の味を維持する難しさ。

美味しいと言っていだだけるのは嬉しいのですが…。

今はなんとか、昔のような味を維持することを第一に考えてうどんづくりに注力しています。

実は以前のような自分でも美味しいと感じられる味を出しづらくなりました。

これは、本当に個人的な感想なんですけどね。

香川県内のほとんどのうどん屋さんで使われている小麦ASWの品質が年々落ちてきていると感じています。

そう感じはじめて15年くらいでしょうか。

中国でも日本のようにパン食が増えてきたようでしてね。小麦粉需要が世界的に増えたことでASWも品質を均一化することが難しくなっているのではないかと考えています。

それでも、現状の小麦粉を使いながら、毎日試行錯誤しています。

例えば宵練りをしたり、加水量を増やしてみたり、毎日色々と工夫しています。

マルタニ製麺 谷本浩司さん

※誠実に取材対応して頂いた「マルタニ製麵」の店主谷本浩司さん。

 

 

 

ーーうどん作りは日々、戦いの連続。

最近のお客様は麺が固いのをコシがあると思っている傾向にありますね。

その結果、全般的に香川県内のうどん屋で出されるうどんが固くなったと言いますか、弾力や食感を重視したお店が増えたのかなあと思います。

安易にうどんの弾力や強さを出す為に、デンプン量を増やしたりしますとね、小麦粉の本来の味や香りが損なわれます。

ひと昔前の讃岐うどんは、食べる時に小麦粉の香りがふわとしていましたね。

それは、今ほど昔の品質の良くなかった小麦粉で作ったからだったかも知れませんね。

昔の小麦粉の品質を知っているがために私たちは四苦八苦しているのかもしれません。

小麦粉の違いが大きいと思いますが、少ない量のかけ出汁でもうどんに味が染みていく感じもありましたね。

現在は、比較的表面が固く出汁も染みにくい。そのために多めに出汁をかけて食べるようになった、そんな印象もあります。

※写真は「マルタニ製麺」の女将さんです。

※奥様が天ぷらなどを担当。昔ながらの讃岐うどん店らしく夫婦で分担されています。

※写真は「マルタに製麺」の天ぷらです。

※讃岐うどんのトッピングとして、衣にも味が付いている名物の天ぷら。

 

 

 

ーーうどんづくりは奥が深い。

うどんは小麦粉と塩、それに水が原料のシンプルな料理です。

毎日、最初にうどんの味見をしますが、出来上がるまでとても不安です。毎日が100点というわけにはいきませんね。自分でも100点と自信を持っていえるのは年に数回なんですよ。

なので、最近の若いうどん屋さんの大将を見ていると、自分の若い頃と比べて、とても器用で上手だと思いますよ。

※写真は「マルタニ製麺」の店内風景です。

※常連さんが毎日来る、自宅のような温かみのある店内です。

※写真はマルタニ製麺の座敷です。

※座敷でゆったり食べるうどんも美味しいです。

 

 

 

ーー忘れられない、凄まじかった年越し。

近所にある、田村神社さんからのご注文で年末にうどんとそばを作らせて頂いてました。

20年前ぐらいになりますが、年末の数日間で1日に10,000玉ものうどんとそばを作っていましてね。

お店用と玉売り用、そして神社からのご注文分になります。

年末の時期ということもあり、店内も活気があり、ごった返してましたね。

讃岐うどんが名物の香川でも、この日ばかりはそばの注文が多かったです。

香川では「しっぽく」を年越しで食べる習慣がありますよね。その期間は私たち家族、親戚など総出で朝から晩までフル回転で作っていました。

当時はまだまだ私も若かったこともあり、あの凄まじかった年越しの時期を乗り切ることができましたが、とてもしんどい記憶しかありません(笑)。

正月はどこへも行けず、すぐに年始の営業をを迎えることになりました。

今となっては懐かしい思い出です。

写真はマルタニ製麺「生蕎麦あります」の看板です。

※年末の風物詩「生そば」です。

※写真はマルタニ製麺 おでんです。

※味のしみ込んだおでんです。

 

 

 

ーー生活スタイルの変化と共に。

今でもお店で食べるお客さんが大半なのですが。

20年くらい前ですと、うどん玉を買って帰るお客様が土日に非常に多かったですね。うどん玉は何とかなるのですが、持ち帰り用の出汁が足らなくなるほどでした。出汁を作る量は一日でだいたい決まっているので、お客さんには大変申し訳なかったです。

最近では料理も時短や効率化が求められています。手軽で簡単に食べられる料理が好まれています。家庭で出汁を取ったりするのが少くなりました。魚屋さんでも調理が大変な魚は売れないようですし。

香川県内のうどん屋さんは皆さんとても頑張っていると思います。日本一小さい県に何百ものうどん屋さんがあります。

昔のようにうどんを卸す先のスーパーや八百屋さんや雑貨屋さんが無くなり、「近所の製麺所」というのが減りました。時代とともに仕方ないことですが寂しい気持ちもあります。

 

 

 

ーー「マルタニ製麺」のこれから。

現在では近所のお客様、常連さんが中心です。

コロナ前は県外からのお客さんも多かったように思いますが、外出自粛の時期は玉で買って帰るお客さんが増えました。

やはり、打ちたてのうどんを店で食べていただくのが一番美味しいのですが、玉で買って帰るお客様はいつ食べられるのか分からないので、申し訳ないなと思います。

おじいちゃん、おばあちゃんたちが気楽に寄って食べられる、当店のようなお店はこれから減ってくるでしょうね。今、54歳なので最低あと10年くらいは頑張りたいですね(笑)。

 

マルタニ製麵
住所 〒761-8044 県高松市円座町1023-1
電話番号 087-886-6814
営業時間 9:30~14:00 (※玉切れ次第終了) ※休みは月曜日

この記事を書いた人

アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/

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