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坂出市高屋町「木下製粉㈱」~品質は最上の営業。讃岐うどんと小麦の可能性~

2020.05.28

讃岐うどん店もひとつひとつ、味が違うように製粉工場がつくる小麦粉も各々変わります。

小麦粉を通じて学び、生涯小麦一筋。木下製粉㈱の木下社長にお話をお伺いしました。

坂出市高屋町「木下製粉㈱」~品質は最上の営業。讃岐うどんと小麦の可能性~

ーー創業について。

弊社は創業者である木下虎七が1946(昭和21)年に、小麦の賃加工として始めました。

食糧難の時代でしたから、食に関連したものが食いっぱぐれが無いだろうという事で、この職業を選択したと聞いています。

「とにかく製造業であるからには、良い製品を作ることが根本」

ということで、社是である「品質は最上の営業」という表現になったと聞いています。

※写真は坂出市「木下製粉:さんです。

※うどん用小麦粉以外にもパン用小麦粉、干しうどんに生うどんも製造販売されています。

※写真は木下製粉㈱木下敬三さんです。

※取材に応じて頂けました、代表取締役社長の木下敬三さん。お忙しいところ、ありがとうございました。

 

 



 

 

ーー讃岐うどん店で多く使われている小麦粉「ASW」。

ASW(※オーストラリアン・スタンダード・ホワイト)はヌードルブレンドとも呼ばれ、日本の麺食マーケット向けに作られた小麦です。

オーストラリアの広大な大地で耕作されているので、相当の品質の安定性が魅力だと思います。

ちなみに同じ麺食用小麦でも、国産小麦になると小麦の色は違うんですよ。

※写真はASWの小麦です。

※多くの讃岐うどん職人さんが扱いやすいと評判の「ASW」。支持されている理由はたんぱく質の「量」と「質」のバランスの良さだそうです。

※こちらが「さぬきの夢」。かなり黄土かかった色です。うどん県初のオリジナル品種です。

 

 

 

 

ーーうどん県のうどん県によるうどん県のための「さぬきの夢」。

初代「さぬきの夢」は2000年に開発されましたが、現在は2009年に開発された二代目「さぬきの夢」にバトンタッチされ、小麦品種としては「さぬきの夢2009」となります(紛らわしいですね)。

製麺適性は、作業現場に於いては充分に実用的なレベルまでに向上しましたが、それでもまだASWの方が若干優れているのも事実です。ただ「さぬきの夢」にはその欠点を補って余りある「食味の良さ」があります。

つまり「香り」と「味」が出色です。

※写真は木下製粉木下社長です。

「『さぬきの夢』は年々良くなってきている」と木下社長。

 

 

 

 

ーーいかにして小麦粉は作られるか「精選(せいせん)」。

最初の作業は、搬入された小麦の「精選」です。

精選とは、比重の違い、振動、風力などを利用して、小麦と異物(石ころ、砂、麦わら、細粒)を分離する工程です。地味な作業ですが、一番重要な工程といっても過言ではありません。野菜を洗わずに口にすると美味しくないように、精選が十分でないと小麦粉に雑味が混入する原因となります。

※木下製粉㈱の現場です。

※今回は特別に現場を見せて頂けました。貴重な体験ありがとうございました。

※木下製粉の工場現場です。

※各小麦のコンデイションとその日の気候や気温等を考慮した小麦づくり。

※小麦をおくるエアーポンプです。

※ちなみに工場内で小麦や小麦粉の移動は全てエアー(空気)で搬送されて、次の工程へと運ばれます。

 

 

 

 

ーー小麦の水分量を調節「調質(ちょうしつ)」。

小麦には9.5〜12.5%の水分が含まれています。これに水を加え15〜16%にまで上げます。この常態で24〜36時間放置します。調質をすることにより、水分がだんだんと小麦の中に浸透し、胚乳部が軟かくなり粉砕されやすくなります。

一方、表皮は引き締まり、強くなるので表皮の破片が小麦粉に混入しにくくなります。

※小麦粉前の小麦です。

※製粉工程はすべて自動化されていますが、ロール間隙など一部の管理は、熟練の技術者により毎回微調整が行われます。

 

 

 

 

ーーその後の工程について。

小麦を機械で挽砕(ばんさい)します。その後は「篩い工程(ふるい)」ですね。

大きさがバラバラになっている小麦をシフター(篩い機)で粒度別に分けられます。イメージとしては、大きな箱の中に何十枚という網を、目の粗い順から並べ水平方向に円運動させながら、落ちてきた小麦を粒度別に分離する…。

最後に小麦粉に残った軽い表皮を吸い上げて…本当に簡単にですが、こんな流れです(笑)。

※写真は木下製粉㈱の木下社長です。

※製造工程の説明中もユーモアを交えて、楽しく教えて頂けました。

 

 

 

 

ーー讃岐うどんにおける小麦粉の成分について。

小麦粉の主成分はでんぷん質とタンパク質です。タンパク質は80種以上ですが、特に重要なのが「グルテニン」と「グリアジン」です。この2つが水と一緒になることで、ねばねばした粘弾性のあるグルテンに変わります。

つまり、茹でる前のうどんの「つなぎ力」は、この「グルテン」によるものです。

ところが、茹でると状況は一変します。

「でんぷん」は、加熱すると水を吸収しながら糊化を始め、どんどん膨れていきます。「グルテン」は温度が上がるにつれて、活性を失い、伸び縮みしなくなります。

よって茹でてしまうと形が固定してしまいます。このようにうどんの「つなぎ力」の主役は、茹でる前後で「グルテン」から「でんぷん」へと交替します。

※写真は木下製粉の木下社長です。

※資料をタブレットで見せて頂きながら、讃岐うどんと小麦粉の関係をご教授してくださいました。

 

 

 

 

ーー讃岐うどんのコシとは。

讃岐うどんのコシがよく話題になりますが、コシは一言でいうと茹で上げ直後の表面と内部の水分勾配です。うどんの中心部分は50%程度に対して、表面近くは約80%なので、表面部分は柔らかく、中心部分は噛みごたえがあります。

「柔らかい中にもコシがある」という一見矛盾した讃岐うどん独特の表現の所以です。

※「日の出製麺所」さんのうどんです

※「日の出製麺所」さんのうどんです。「さぬきの夢」でつくったうどんも昼1時間の間で食べられます。

 

 



 

 

ーーおいしい讃岐うどんとは。

「おいしい」と言うのは個人の好みと主観だと思いますね。

私の思う「おいしいうどん」は、口に入れて噛んだ後、ひと呼吸遅れて、小麦の風味とほんのりした甘みが口の中に広がります。

うどんで一番重要な要素は小麦の素材本来の旨味だと思います。適度な軟かさとコシを兼ね備えた、うどんに感じることができます。それは、うどんを作る際の加水率や熟成時間に大きく影響されます。まさに、うどん職人の方々の努力の賜物ですね。

※写真は木下製粉の木下社長です。

※「これからも讃岐うどん業界のお役に立てるよう頑張っていきたい」と木下社長。

 

 

 

 

ーー最後に。

コシといえば、讃岐うどんの代名詞のように言われています。

確かにコシは大事ですが、個人的には、コシよりもうどんの食味そのものがより重要であると思っています。いくらコシがあっても味のないうどんは、砂を噛むようで味気なく、そのうちに飽きてしまいます。

最近は、特徴ある老舗のうどん店の廃業が目立ち残念ですが、一方では若いうどん店の大将も、次々と登場して頑張っています。私たちはそういった大将のお役に立てるよう後方支援をしっかりと頑張っていきたいと思います。

※お忙しいところ、取材のご対応ありがとうございました。

 

 

木下製粉株式会社
住所 〒762-0017 香川県坂出市高屋町1086-1
電話番号 0877-47-0811
公式サイト www.flour.co.jp /

この記事を書いた人

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