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~ 木下製粉㈱木下社長の小麦エキスパート奮戦記~「藍綬褒章(らんじゅほうしょう)」受章記念インタビュー~

2021.06.22

讃岐うどんやうどん業界を盛り上げる方にインタビューする一問一答コンテンツ「#sanukiudon(ハッシュタグさぬきうどん)」。

令和3年春の褒章受章者の褒章発表で、木下社長が藍綬褒章(らんじゅほうしょう)を受章されました。

うどん県である香川県で地域密着でご活躍されて来られました木下製粉㈱の代表取締役社長である木下敬三さんにインタビュー。

藍綬褒章の受章についてはもちろん。

小麦粉の変遷や讃岐うどんの関係、さらには今後の小麦粉業界についてもたっぷりとお話をお伺い出来ました。

〇過去記事はコチラ→坂出市高屋町「木下製粉㈱」~品質は最上の営業。讃岐うどんと小麦の可能性~

 

 

木下製粉㈱木下社長の小麦エキスパート奮戦記~「藍綬褒章(らんじゅほうしょう)」受章記念インタビュー~

ーー藍綬褒章受章について。

いえいえ。とんでもないです。

私なんかが受章して良いのか。本当に申し訳ない限りです。

全国乾麺協同組合連合会(以下全乾麺)でご推薦頂いたのが大きな理由だと思いますね。私がたまたま全乾麺の副会長を何年か、やりましたので事務的にご推薦頂けたのだと思います。

簡単に言いますと、全乾麺の代表として貰ってるだけですよ(笑)。

受章理由は、「麺類製造業振興功績」ですが、地元の紹介記事では、これが「讃岐うどんの振興」として紹介されましたが、結果的にはこれで良かったのかなと思っています。

※写真は木下製粉㈱の木下社長です。

※「香川県の製粉会社ですので、讃岐うどんとの関連で受章されたように捉えられてますが、乾麺関係での受章なんですよ」と木下社長。

 

 

 

 

ーー木下製粉㈱と乾麺製造について。

昭和28年(1952)に乾麺工場が併設されましたので、当社と乾麺との関りは非常に古いです。

当社の売上ボリュームでも、乾麺は25~30%を占め、小麦粉に次ぐ柱となっています。

現在では、乾麺の製造工程は、ほぼ自動化されていますが、私が幼い頃は竹に吊るした乾麺を、屋外まで運び乾燥させていましたね。手作りです。

昔は天気予報が当てにならない時代でしたので、お天気だと思っていたら、突然、雨が降ってきて、慌てて取り込んだという話も聞いたことがあります。

今振り返ると大変な時代でしたが、当時はどこも同じような作り方でした。

今でも、小豆島の手延べ素麺などは、屋外で天日乾燥をしています。乾麺に限らず、昔の方は皆さんご苦労されていました。

※写真は木下製粉様の外観です。

※昭和21年(1946年)戦後まもなく、木下虎七さんが小麦の賃加工業として創業。

 



 

 

ーー変化し続ける乾麺市場。

戦後は国内需要が最高35万トン近くまでなりましたが、現在は19~20万トンに落ち着いています。需要が減少した理由は、別に乾麺の魅力がなくなったからではなく、「食の多様化」が要因だと思います。

うどんを例に挙げると、昔は乾麺のうどんかうどん屋さんのうどん玉の2種類しかありませんでした。

しかし、現在はスーパーに行けば冷凍うどんがあり、調理麺(うどん)があり、即席うどん等、色々な種類のうどんが並んでいます。このようにうどんひとつ取ってみても多様化が進みました。それを「食」全体で見ると、更に多様化が進みましたよね。

戦後は日本にパスタは存在しませんでしたから、パスタ需要はゼロでした。

ところが現在では、パスタ全般では、国内生産と輸入も含めて、国内需要が約30万トンと乾麺よりも大きな市場に成長しました。このように様々な市場で変化が起こり、「食の多様化」が進んでいます。

※写真は「木下製粉様」の第3倉庫です。

※創業から現在まで多岐にわたる小麦商品をリリースし続ける木下製粉さん。

 

 

 

 

ーーひと口にうどんといっても需要は様々。

コロナ渦での巣ごもり需要で、乾麺は好調に推移していますね。

一方、外食産業であるうどん店は厳しい状態が続いています。

県内でいえば、地域密着店よりも観光客が多く訪れる名店や人気店の方が、より大きな影響を受けています。

特に首都圏では、テレワークやリモートワークにより、オフィス街のうどん店では客が激減しました。オフィス街での家賃は高額なだけに、固定費の支払いもままならず、本当にお気の毒です。

更には、観光地で販売されている「おみやげうどん」となると、ほぼ需要が蒸発した状態が続いています。

※写真は「日の出製麵所」さんのうどんです。

※うどんといっても多種多様。コロナ渦はうどん業界にも大きな影響を与えました。

 

 

 

 

ーー基礎的食材である小麦粉需要。

コロナ渦で小麦粉産業も厳しい状態が続いています。

本来、小麦粉とかお米といった基礎的食材は、どういう経路を辿っても、最終的には人のお腹の中に入ります。よってその基礎的食材の消費量は人口に比例するので、需要は変わらない筈なんです。

でも、実際に2019年と2020年を比較すると小麦粉の使用量は全体で数パーセント落ちています。インバウンドの減少の影響もありますが、それ以上に外食産業の落ち込みが原因していると考えています。

つまり、これまで発生していたフードロス。いわゆる、食品ロスが減少したことが原因かもしれません。

※写真は「木下製粉様」の小麦粉です。

※フードロス削減は必要不可欠ですが、一気に削減してしまうと市場に対する影響は甚大とも。

 

 

 

 

ーー小麦粉製粉の技術的な躍進について。

小麦粉は基本的には小麦100%ですから。大きな変化はないはずです。

しかし、過去の流れを見ますと「タピオカ」の登場が大きな転機になったと思います。

タピオカとは、キャッサバというイモの根茎から製造されるでんぷんです。一口にでんぷんといっても、色んな植物のでんぷんがあり、それぞれ性質は異なります。

そして、あるとき食品会社の研究者が、小麦粉とタピオカとの相性が良いことを発見し、それが冷凍うどんに応用されました。

※写真は「キャッサバ」とでんぷん。

※現在では一般的に認知されている「タピオカ」。キャッサバの根茎=根っこから取れます。

※写真はうどんを茹でています。

※うどん業界に衝撃をもたらしたタピオカ。

 

 

 

 

ーータピオカを使うとどうなるのか。

タピオカを使うと、まずは茹で時間が短くなります。

少し専門的になりますが、でんぷんは水を加えて熱すると、徐々に水分を吸収しながら糊化(こか)。つまり糊状になります。

そして、糊化が完了すると、私達はうどんが茹で上がったと感じます。タピオカでんぷんは、糊化する温度が小麦でんぷんよりも低いので、タピオカでんぷんを入れるほど、湯で時間が短くなり、生産効率が上がります。

2つ目の特徴は、冷凍保存性の向上です。簡単に言いますと冷凍保存できる期間が長くなります。

3つ目が、タピオカ独特の食感である「グミ感」がアップします。このグミ感を、うどんのコシと感じるかどうかは個人差があり、好みが分かれるところですね。

一方、良いことばかりではありません。

タピオカを入れるほど、小麦の風味は薄れます。つまりトレードオフは小麦風味と食味の低下です。

ですから、タピオカ入りのうどんは、結構好みが別れますね。個人的な意見ですが、私は小麦100%派です。

しかし、タピオカ入りのうどんは確固たる市場を確立していることは、間違いありません。いずれにせよ、選択肢が拡がることは、良いことで、これもうどんの多様化です。

※写真は木下製粉㈱の木下社長です。

※「タピオカを入れると、全く違ううどんになるのですが、消費者にとって選択肢が広がることは良いことです」と木下社長。

 

 



 

 

ーー国内小麦粉の輸出やグローバル化について。

当社もずいぶん前から海外に出荷しています。

個人的には「かけうどん」や「かけそば」は外国人の口には、中々馴染みにくいところがあるかな…と思っておりました。

なぜかと言いますと、元々、特に西欧人は熱いかけ出汁を食べる習慣がないので、食べ慣れてないと火傷をするかもしれません。

また「かけうどん」を食べるときは当然、すすらないといけませんね。

すすった時に生じる「ズルズル」という音が食事マナーに反するということで、敬遠されていたんです。

ただ、昨今時代は変わり、そういう意識は薄れつつあると思います。都会にいくと、外国人が箸を器用に操り、ラーメンをすすっています。

※「コロナ渦の影響もあり、消費者の生活様式が様変わりしている」と木下社長。

 

 

 

 

ーー小麦製粉の昔と今。

40~50年前は、製粉機械も十分でなく、製粉技術も未熟なところがあり、また小麦そのものの品質も良くありませんでした。

ですので、昔と今の小麦粉の決定的な違いは品質が安定したことです。

その後、製粉機械の性能の向上、品質管理の導入、小麦の品種改良などの積み重ねで、現代は高品質かつ安定した小麦粉が供給されるようになりましたね。

※写真は「木下製粉様」の工場内写真です。

※現代の製粉産業は、品質向上のために機械装置の種類も増え、装置産業になってしまったそうです。

 

 

 

 

ーー香川県の製粉会社として。

中小規模の製粉会社の良いところは、鮮度のよい小麦粉を提供できることだと思っています。専門用語では、小麦から最終製品の小麦粉になるまでの途中の段階の製品を、「半製品」といいます。

そして、工場内で半製品はすべて、エアー(空気)で搬送されます。

ですので、小規模製粉であるほど、空気にさらされる時間が短くなり、逆に大工場になるほど長くなりますね。空気にさらされる時間が長くなると、酸化が進み、それが品質の低下につながる可能性があると考えられます。

製造元の私が言うことではないですけどね(笑)。

これは実際に小麦粉を使ってくださっているお客様が判断されることだと思いますからね。

※写真は「木下製粉様」の木下社長です。

※「企業として存続するには、新しい事業内容への挑戦も必要です」と木下社長。

 

 

 

 

ーー小麦ふすま「夢ブラン」の販売。

5年ほど前からですが、従来は家畜飼料としてしてしか利用されていなかった小麦の皮の部分、つまり小麦ふすまを、食品用に加工した商品「夢ブラン」を販売しています。

現代の食生活では、食物繊維が不足しているせいか、小麦ふすまを使った商品「夢ブラン」が好調です。

Amazon等のメジャーなプラットフォームでも販売していますが、先日NHKのテレビ番組で、腸内環境を整えるために「小麦ふすま」が良いと放送された途端、注文が殺到し、一時的に欠品しました。

タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルを5大栄養素といいます。一方、食物繊維は、消化できないので、従来は食品のカスだと考えられていました。

しかし近年、食物繊維は、腸内環境を整える腸内細菌の格好の食事であることがわかり、第6の栄養素とまで言われるようになりました。

※写真は「木下製粉様」の夢ブランです。

※人気商品「夢ブラン」。健康に関わる様々な物質をつくる腸内細菌の食事となる食物繊維がたっぷり。

※写真は「木下製粉様」の木下社長です。

※「夢ブランは大きなふすま片だけを使用しているので、雑味がありません」と木下社長。

 

 

 

ーーうどん屋さんを目指す方必見。木下社長の商品解説。

直球勝負といいますか、王道は「讃岐すずらん」ですね。

当社製品の中で、最も多く利用されています。釜入れしたときに漂う麦の香り、これで小麦粉の鮮度を感じてもらえます。同時にうどん粉としても扱いやすいのが特徴です。

うどん専門店から初心者まで、幅広くご利用いただける銘柄です。

※写真は「木下製粉様」の讃岐すずらんです。

※木下社長おすすめの「讃岐すずらん」は初心者の方でも失敗しにくい粉です。

 

私が個人的に好きなのは「さぬきの夢」です。

グルテンが少ないので、水回しにある程度のコツが必要な小麦粉ではあるんですがね。「さぬきの夢」は、香川県産小麦「さぬきの夢」を100%使用しています。小麦の香りにほのかな甘み、そしてモチモチした食感と黄色がかった色調が魅力です。初心者の方には、やや難しい粉ですので、讃岐すずらんで少し経験を積んでから挑戦してみてください。

※写真は「木下製粉様」のさぬきの夢です。

※香川県産小麦を100%使った小麦粉。香川県民の夢と希望が詰まっています。

 

 

 

ーー讃岐うどんとしての小麦粉。

私はうどんを毎日食べても飽きない小麦粉、つまり小麦100%の小麦粉が好みです。

一般的には、讃岐うどんはコシが命だと考えられています。確かにそのとおりですが、食味はそれ以上に重要な要素だと考えています。

うどんに限らず、どんな食品にもその食品特有の「旨味」があります。

そしてうどんには、小麦特有の「旨味」あり、十分に熟成が効いたうどんは、噛んだあと一呼吸遅れて、小麦特有の旨味が、口内に広がります。そしてこの淡い甘みが感じられるうどんは、毎日食べても飽きないと思います。

一方、タピオカがたくさん入っていると、食後に妙にお腹が膨れた感じがしますが、これを「腹持ちが良い」と表現される方もいます。

繰り返しますが、個人的には「小麦粉100%派」ですが、これはタピオカ入うどんを否定しているわけではありません。選択肢が拡がり、食の多様化が進むことは良いことだと思います。皆さん、それぞれの趣味嗜好で選択すればよいと思います。世の中は常に変化しています。

実際、小麦ふすまが求められる時代になるとは、夢にも思いませんでしたからね。

※写真は「木下製粉様」の木下社長です。

※健康のために、毎朝自転車での運動を欠かさないという木下社長。

 



 

 

ーー最後に一言。

思いもよらず藍綬褒章授章の栄誉に浴しました。これもひとえに、皆様方のご芳情の賜物と改めて感謝しかございません。

正直に申しますが、実のところ受章に値するようなお仕事はできておりませんので…。お祝辞等をいただく度に心が少し痛みます。とはいえ今回の褒章受賞は素直に嬉しく、ありがたい経験となりました。

これからも、体に気を付けて頑張っていきます(笑)。

※写真は「木下製粉様」の木下社長です。

※藍綬褒章の受章おめでとうございました!

 

 

木下製粉株式会社
住所 〒762-0017 香川県坂出市高屋町1086-1
電話番号 0877-47-0811
公式サイト https://www.flour.co.jp/

この記事を書いた人

アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/

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