讃岐うどんの謎を解明。讃岐うどん一問一答~亀城庵(きじょうあん) 藤井社長に讃岐うどんの「なぜ」を聞きました~
- 2021.07.20
讃岐うどんの謎を解明。讃岐うどん一問一答~亀城庵(きじょうあん) 藤井社長に讃岐うどんの「なぜ」を聞きました~
ーー日本に「うどん」が根付いたのは。
はい。まず、うどん自体が日本食と信じられているフシがありますね。
香川県にうどんが来る迄のお話や日本で広まった理由を解説していきますね。元々、うどんも蕎麦も中国から日本に入ってきた食べ物です。なぜ、この様なことが起きたのか、またうどんのルーツとは…ということですね。
日本が奈良や平安時代という時代は中国が先進的でしたね。日本も国策として中国の文化や技術を積極的に吸収しようとしていた時代です。
諸説あるようですが、奈良時代に中国から日本に伝来した「こんとん」を起源とする説が有力です。小麦粉で作られた団子のような「こんとん」を温かい汁に入れ、それを食べるようになったのが始まりという感じでしょうか。
また、有名な説で言いますと、遣唐使と共に中国に渡った空海がうどんの文化を香川県から日本に広めたという逸話もあるようです。
少なくとも、現在のようにカツオ出汁と醤油で味付けした汁でうどんが食べられるようになったのは、醤油が庶民の手に渡るようになった元禄時代(1688年)以降ですね。
実はうどんの歴史はそばよりも古く、日本人に最も長く愛されてきた麺料理なんです。本当に奥が深いんですよ。
ーー香川県に「うどん」が伝わったのは。
香川県のうどんの歴史は古く、およそ1200年ほど前にさかのぼります。
延歴804年に弘法大師空海は唐の国へと渡り、1年ほど唐に滞在し、806年に今のうどんのもととなる製法もしくは小麦、団子状の菓子のいずれかを持ち帰ったと言われています。当時のうどんは今のように麺状ではなく、団子をつぶして薄く延ばしたものが主流でした。
現在のような麺の形となったのは、1700年頃に描かれた「金比羅祭礼図」の屏風絵にうどん屋が描かれていることから、300年ほど前からだと考えられています。江戸時代を舞台にした古典落語「うどん屋」にも登場しています。香川県では江戸時代の庶民の味として、うどんは親しまれていたのでしょう。
ーー香川県で「うどんづくり」が盛んな理由。
香川県でうどんがここまで浸透したのには、この土地が小麦づくりに適した風土であったことが挙げられます。1年を通して温暖な気候で雨も少ない。さらに土壌も良質であったことが大きいです。降水量が少ないと水が確保できず、稲作自体が難しいので、米の代用品として小麦が用いられたと考えられます。
昔は米は贅沢品でしたから。小麦は米の代用品として欠かすことができない食材だったはずですね。
それに加えて瀬戸内地方では塩田も多く、塩づくりも活発でした。
うどんのつゆとなる醤油作りも盛んで、ダシが取れるイリコも近隣海域で良く獲れた。香川県には、讃岐うどんの原料となるものが、本当に身近にあったということですよ。
ーー「伝統的な讃岐うどん」昔ながらの讃岐うどんとは。
香川県は讃岐うどんの本場ですのでね。うどんの製法に関しては昔から言われてきた諺(ことわざ)がいくつか残っています。そちらを引用しましょう。
まず「土三寒六常五杯」。
これは小麦粉に加える塩と水のバランスのことを言ってます。夏場は暑い時期なので、塩1枡に対して水は3枡に、冬場は塩1枡に対し水は6枡。春秋は塩1枡に対して水が5枡と目安にしていましたね。
次に「朝練即打ち」。
昔は水車製粉で小麦粉を挽いていたので、現在の様に小麦粉の中心部分だけを使った真っ白い小麦粉ではなくて、不純物の多い全粒粉でした。そのために酵素活性が高く、熟成すると含まれているデンプン分解酵素、タンパク分解酵素の働きで麺線が早く劣化してしまっていたのです。
上記のような、昔から行われていた讃岐うどんの製法というのは、令和の現代には合わないですね。小麦粉は全粒粉で不純物が多く麺の劣化も早い、塩の分量も多く塩辛いわけですから。
伝統的な讃岐うどんは(現代と比べると)
「美味しくないうどん」
ということになってしまいますね(笑)。
少なくとも、それを再現しようとすると、小麦粉等の原料や環境、製法等を諺が通用していた、当時のやり方でつくらねばなりませんね。多くの条件、例えば、水車製粉で朝練りで寝かさないとか…そういうお話になるかも知れません。
要するに、諺の時代は戦後の物不足の時代で高度成長経済の入り口です。そういう時代は、まずはお腹を満たすことが優先的で重要だったわけですから。
美味しい、美味しくないは二の次なんですよね。
ーー「さぬきうどんブーム」の本質。
メディアの力がとても大きいのですが、本質は何かだと思います。
ブームになった決定的な理由、それは香川県のうどんが美味しいからですよ。
ブームとなり、文化としてある程度定着したことは単なる偶然の産物ではありません。地元香川県の先人、私たちの先輩方々の努力の結晶と日々の研鑽の積み重ねの結果です。
それは忘れてはいけませんよね。
もともと「うどん」という料理は、日本全国にありました。香川県が讃岐うどんの本場になったのは政治家の力も大きいと思います。
まず、1950年から24年間県知事を務めた金子正則さん。次に大平首相の功績です。著名な政治家が特色のなかった香川県を「うどん」を切り口に香川県の特産品に仕上げた功績が非常に大きいですよ。
それに加えて、時代の節目節目でうどんの新しい食べ方が誕生したことが、間違いなく重要な役割を担っています。
1950年代には川福の創業者が「ざるうどん」を考案して、業界で一躍有名になりました。現在でいうつけ麺ですよね。
その後、かな泉が「釜揚げうどん」を全国に広めました。
1976年に小縣家が大根おろしの生醤油うどんを、さらに山田家がぶっかけうどんを始めました(※諸説あり)。
ブームと同時期には必ずと言って良いほど、うどんの革新的な食べ方が生まれているんです。
だからこそ、自分も含めてですが…厳しい言い方をすれば、先人が築いた伝統を守るだけではなくてね。批判もあると思いますが、前例のないことに挑戦したり、新しいうどんを創造することをやめてはいけないんですよ。
実はそれを偉大な先人たちがやってきたからこそ、現在の讃岐うどんがあるわけですから。それに、讃岐うどんは世界に誇るグローバルフードになる可能性が十分にありますからね。
ーー讃岐うどんの「コシ」の正体は。
讃岐うどんの「コシ」の正体は硬さと粘り強さのバランスです。
麺の表面と中心部の水分量の勾配という意見もごもっともですが…。それは讃岐うどんに限らず、他県のうどんも該当しますし、パスタ等の麺類全般にも言えることですからね。
とにかく「コシ」というのは、非常に曖昧な言葉なんです。
この言葉では、独特の食感の正体を表すことができないので、私は硬さと粘り強さの重なった部分と定義することにしています。
専門的な話を少しだけ。
硬さということを具体的に言います。たんぱく質の含有量が高い小麦粉を使うと、硬いうどんになります。
それは、たんぱく質自体に加熱すると硬くなる性質があるんですよ。卵や肉なんかがそうですね。
粘り強さというのは、小麦粉に含まれているでんぷんの粘り強さで決まります。でんぷんは熱を加えると粘っていきます。粘り強いでんぷん質が含まれている小麦粉ほど、粘り強いうどんが出来ます。でんぷん質の粘り強さの測定はブラベンダーマシンで行なわれ、アミロ値として表示されます。通常、アミロ値が850以上程度あれば、うどんに適した小麦粉であるといえます。
「コシ」という曖昧な言葉は、受け手の捉え方次第にとれる言葉で便利でもあり、難解なところなのです。
そこが讃岐うどんの奥深いところでしょうね。
ーー讃岐うどんの「コシ」を感じるために。
結局ね。「コシ」は硬さと粘りのバランスなんですよ。
美味しいとされるうどんは前歯で噛むと切れない。嚙み切れないうどんほど、粘りと心地よい硬さがあります。前歯はとがってますから、一番うどんの弾力を感じやすいはずですね。
有名なうどんが全国各地にありますね。地方毎に簡単に解説します。
一般的に九州のうどんは柔らかくて粘りがあります。食感として、硬いのは富士吉田のうどんです。
讃岐うどんと富士吉田のうどんの中間が武蔵野うどんですね(※諸説あり)。
「コシ」の強さを順番で言いますと、一番「コシ」がある固いのは富士吉田。次に武蔵野のうどん。その次に讃岐うどんです。私からすると、実は讃岐うどんは食べやすいバランスの良いうどんです。
※「もの作りは魂を込めること」藤井社長の動画もぜひ。
ーー世界から注目される日本の食文化「うどん」。
振り返ると「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代がありましたが、経済の分野ではアメリカや中国に遅れを取ってしまいました。
そんな中でも、日本が世界に誇れる強みは「日本食」です。「日本食」は世界遺産にも登録され、世界中で「日本食」は高い支持を得られています。
さらに、世界中の国々で高齢化社会が加速する中、高齢者でも食べやすい麺料理のうどんは世界規模でニーズがあります。
香川県の伝統的な文化である、うどんを世界中に広めることが我々の使命です。
私は元々、讃岐うどんを作っていたわけでもなく、35年前に製麺卸業を創業した新参者ですが、私が創業した時の決意というのが、
「どこにも負けない最高に美味しいうどんを作ること」
「絶対に防腐剤、添加剤を入れないうどんを作ること」
この2つは必ず守り続けて行こうと心に誓って、今日まで継続しています。
亀城庵のうどんのお求めは亀城庵丸亀店・宇多津店でお買い求めください。
亀城庵(きじょうあん) ㈱讃匠 | |
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住所 | 〒769-0203 香川県綾歌郡宇多津町浜三番丁37番4 |
電話番号 | 0120-45-2860 |
営業時間 | 9:00~17:30 ※休みは土・日・祝日 |
公式サイト | https://www.kijoan.com/ |
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この記事を書いた人
アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/
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