讃岐うどんは面白い~前編~「うどん学」を教える合谷教授にインタビューしました。
香川大学の人気講義「うどん学」をご教授されている、農学博士の合谷祥一(ごうたにしょういち)教授に取材させて頂きました。※以下、合谷教授の簡単なプロフィールです。食品物理学を専門に農学博士として、2000年には日本食品科学工学会奨励賞を受賞。食品に関する様々な研究と多くの書籍や論文を発表。現在も食品物理学の研究と同時に地域貢献の一環として「うどん」学を香川大学で農学部の他の先生方、農学部以外の先生、香川県職員の方々、製粉会社の方々と共同して講義中です。
詳細はコチラ→合谷教授プロフィール
讃岐うどんは面白い~その1~「うどん学」を教える合谷教授にインタビューしました。
今回は高松市三木町にあります、香川大学農学部にて取材させて頂きました。研究室と学校が一緒になっています。人気講義「うどん学」とは一体、何を教えているのでしょうか。
ーー「うどん学」のきっかけ。
きっかけは地域貢献のひとつです。香川県は学生の地元就職率が高くなく、みんな、県外に出たがる傾向があります。県外で就職される学生が多いので、少しでも学生に地元香川へ興味を持ってもらえれば…。地元で働いて、地域貢献出来るような人が育つ手段のひとつであればというのが、きっかけでしょうか。
また、大学の講義なので、讃岐うどんの良い面だけでなく、社会問題にもなっている、ゆで汁の廃棄問題等についても、学生には触れるようにして貰っています。
ーー「うどん学」の授業内容。
内容は讃岐うどんに関すること全般です。歴史からはじまり、讃岐うどんの作り方、おいしさの分析、環境問題から実習までをひとつにしています。実は「うどん学」は学生にも人気の講義なんです。いつも定員オーバーしますので、受講者の定員はくじ引きで決めています(笑)。授業は私以外にもいろいろな先生と共同で学生に教えていますね。
ーー讃岐うどんの起源…空海が持ち帰った説。
地元の方が好きな説ですね(笑)。
現状で確たる証拠はないんです。
他には、唐菓子(からくだもの)という小麦粉を練って餡を入れたり、様々な形にして焼いたり煮たりしたものから変化したなどの説がありますが、定説はないですね。江戸時代の百科事典と言われている、和漢三才図会(1713年)に現在の讃岐うどんとほとんど同じつくり方が確認できます。江戸時代中盤には江戸や大阪でもうどん屋があったとする記録はあるようです。一方、金刀比羅宮秋の大祭を描いた「金毘羅祭礼図」(元禄時代)に3軒のうどん屋が確認できます。
明治時代になって、製麺機も普及しますが、発祥は九州の博多か佐賀だったりします。歴史的に見ると、香川県は国内でうどんづくりが一番先進的だったとは言えない事例も意外に多いんです。
ーー讃岐うどんブームから文化へ。
ひと昔前は讃岐うどんは15~20年ごとにブームになっていました。大阪万博や瀬戸大橋開通がきっかけで観光客に火がつくケ-スが多かったんですね。現在は讃岐うどんはブームというより、全国的に認知された文化になったのではないでしょうか。
認知された要因ですが、個人的には首都圏でセルフうどん店が爆売的な人気となり、都会で讃岐うどん店が増えたことがきっかけだと思います。それで元祖である香川県を巡ろうというのが大きいのではないでしょうか。
ーー讃岐うどんの定義。
これはしっかりと定めてるものがあります。条件は5つですね。
・香川県内で製造されていること
・加水率40%以上
・加塩率3%以上
・熟成時間は2時間以上
・15分以内に茹で上がること
上記を満たすことが、本場讃岐うどんと定義されていますね。讃岐うどんが、讃岐うどんたる条件ばかりだと思います。
ーー納得感のある定義。
讃岐うどんをつくる原材料で定義しているのではなく、あくまで作り方、製法で定義しています。原材料で言うと、オーストラリア産小麦を使っている讃岐うどん店が圧倒的に多いですからね。出汁も昆布やいりこ等、お店毎に違いがあります。
ーー地元香川産小麦粉の開発。
数十年前は香川県産の小麦でうどんを作っていました。しかし、1970年代中盤頃から価格も安く、品質も安定したうどんをつくりやすいASW(オーストラリア産小麦)が台頭します。それを受けて、香川県でも地元香川の小麦粉で讃岐うどんをつくろうということで。
2000年に県産小麦「さぬきの夢2000」が誕生しました。2009年には、さらに良い品質のものをということで、一から小麦を交配し直して「さぬきの夢2009」が完成します。現在、香川県で作られている、小麦粉の90%以上が「さぬきの夢」なんです。評判も上々で今後は順調に増えていくのではないでしょうか。小麦ひとつとっても、色々な方々の協力があってこそなんですね。
讃岐うどんはみんなで支えている県民文化です。学生にはこういうことも含めまして、広い視野で讃岐うどんを捉えて貰い、地域貢献してもらえるきっかけとなればと。
ーー後編へ続きます。
この記事を書いた人
アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/
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