讃岐うどんの謎「一番釜」。そして、職人が明かす「一番釜」の真実~ 著書 「ヨコクラうどん」横倉英城~
「一番釜(いちばんがま)」。
それは、讃岐うどんファンの中でもあまり深く語られない、触れてはいけないワード。
そんな謎に満ち溢れた「一番釜」について、執筆してくださったのは高松市鬼無町「ヨコクラうどん」店主の横倉英城さんです。
「ヨコクラうどん」さんは江戸時代から続く超老舗の讃岐うどん店。
5代目である横倉英城さんが書き上げた渾身の処女作「一番釜の真実」をご覧ください。
讃岐うどんの謎「一番釜」。そして、職人が明かす「一番釜」の真実~ 著書 「ヨコクラうどん」横倉英城~
ーー老舗讃岐うどん店5代目の自己紹介。
初めまして。ヨコクラうどんの横倉英城と申します。
本日は普段、皆さんが身近に接しているけれど、案外知らない「うどん屋の真実」をお話ししたいと思います(笑)。
と、勿体ぶって始めさせていただきましたけれども、ここで書かせてもらうことはあくまでも、私の職場の「ヨコクラうどん」での事例です。
全てのうどん屋さんに当てはまるお話ではありませんので、ご注意くださいね。
ーー今回のテーマ「讃岐うどん店の一番釜」。
今回のテーマは
「一番釜って美味しいの?」
ハイハイ、皆さんの言いたいことわかりますよ!
「一番釜」ってなんですか?
って事でしょ。
ーー「一番釜」とは。
今から説明しますから、そう慌てずに聞いてくださいよ。どうせ、暇なんでしょう(笑)。
読んで下さっている読者の皆様の「忙しい」理由は
「たまってる朝の連ドラ見なきゃ!!」とか
「このページのウォーリー、2時間ぐらい探してるけど全然見つからなんですけどー!!」とか
「昨日からずっと嫌な上司の家にイタ電してるんだけど全然出てくれねーよ!!」
とかどうせ、そんなもんなんでしょ!?後、イタ電はダメよ!
って事で、「一番釜」の説明なんですけど、読んで字の如く
「その日、釜から一番最初に茹で上がるうどん」
の事なんですよ。
ーー1日のはじまり「一番釜」とクォリティ。
こう聞くと、何やら「食べてみたい!!」って気になりませんか?
1日が始まる、最初のまっさらの湯で茹でられた麺って、物凄く清らかで新鮮な「何かしら素敵感」…感じません?
実際、お店にもたまにいらっしゃいます。
「私、いろんな店の一番釜狙って食べ歩きしてます。」
そう言って、開店前からお待ちになっていらっしゃる方が。
でも、ですね。
残念ながらウチの店に限って言わせて頂くと、その日最初の釜ははっきり言って
「何がでるかわかりません!!!(笑)」
と言いますのも、その日の最初に茹で上げた麺の具合を見て、その日の麺の茹で加減を調節するからです。
いわば、「一番釜」の麺はその日のうどん生地と茹で上がりの状態を調べるための「サンプル」に近いものなんです(笑)。
ーー讃岐うどん店にとっての「一番釜」。
ですので、朝一番の「うどん」が完璧に仕上がる日もあれば、朝一番の麺の仕上がりが思ったより、固いことも、逆に、柔らかい事もあります。
当然、作り手としては毎朝、同じような仕上がりになるように気をつけて製麺していますが、やっぱり朝一番のうどんだけは未だに緊張します。
ーー「一番釜」が難しい理由。
その他にも「一番釜」が緊張する理由として挙げられるのは…。
私の技術が未熟なせいなのかもしれませんが「さら湯」よりはある程度うどんを茹でて、釜の湯が適度に濁った状態の方が「コンディションの良い麺」を作りやすいからなのです。
理由ははっきりとはしていませんが。諸説あるようです。
〇適度な量の麺を茹でる事で麺の中の塩分が湯の中に溶け出して、湯の沸点が上がる事で麺の中まで火が通りやすくなる。
〇溶け出したタンパク質が湯の表面に薄い膜を作り、茹で釜全体を「蒸し込んで」いる状態を作り出すから全体に火が通って、しなやかで艶やかなうどんができる。
この辺の理由が妥当かな、と思っております。
ですので、「さら湯」というのは、そうした釜の中のプラス環境がまだ整っていない状態での製麺なので。
こちらとしてはまだまだ「準備体操」的な気持ちなんです…。
ーー横倉英城「一番釜」を例えました。
例えると、自分が出場した陸上競技会で係員から
「はい、じゃあ、こちらでウォーミングアップしてくださいね。本番に近い形で、このレーン使ってやってもらっていいですよ。」
なんて、言われてその気になって、軽く100メートル流して走ったら突然、場内アナウンスで
「只今のヨコクラ選手の記録23秒53!!」
ウグイス嬢がこみ上げてくる笑いを必死で、押し殺しながら、屈辱的な記録を高らかに読み上げたとしたら!!
ーー横倉英城、さらに「一番釜」を例えました。
ちょっと分かりにくいか?(笑)
リモートワーク期間中にズームを使ってのプレゼン会議があるからって
「ちょっと軽くリハーサルしておこう」
と思って、カメラに向かって
「『あー。おほん、諸君。』ちょっと、違うかなー。諸君じゃ偉そうかなー?
じゃあ、
『えー、おほん、君たち!!!』。
それもちょっと違うか?うーん、
『おほん、お前らー!!!』
流石にこれはないよな?
もうちょっと、フランクにちょっとギャグから行くのもアリか?
『おい!!!愚民ども!!!よく聞け!!!!』
・・・・・。」
などとカメラに向かって一人で延々とやっている所が、実は全て参加者全員に配信されていたら。
余計、分かりにくいか?(笑)
とにかく、我々にとっての「一番釜」とは「その日の釜と生地の具合を確認する」。
この意味合いが高いので、茹で上がりまで、割と緊張していたりします(笑)。
まあ、そんなにこっちが驚くほど、予想外な麺が出来上がることはありませんが、その日の「ベスト麺」が出来上がる確率はかなり低いんですよね。
ーー店ごとに考え方が違う「一番釜」。
ただし、この辺はお店によって、本当に色々事情や環境が違いますので、これはあくまでも「ヨコクラうどん」に限っての話だとご理解ください。
とはいえ、ウチの店中においても、例えば、当店では製麺の卸業務もやっておりますので。
朝早い時間帯にまとまった数の注文があるときは、お店の営業開始時間にはかなりのうどんを作り終えた後となります。
ですので、釜の湯は「さら湯」とは程遠いコンディションになっていることも多々ありますのでね。
オープン同時に飛び込んだら、必ず「一番釜」にあたるというわけでもないので注意しましょう。
ーー「一番釜」は奥深い。
お店によってそれぞれの製麺方法が違う部分もあり、尚且つ、同じお店であっても、その時々の状況によってオープン同時に「一番釜」が出てくるわけでもない、となると結局の所、お客様にとっては
「その日、そのお店に行くまで、何もわからない」
としか言えない、結論に達しました(笑)。
そもそも香川県内だけでも600店以上ある、うどん屋について私が代表で語れるわけでもないですし、逆を言えば、だからこそ、
「奥が深くて、人それぞれにいろんな楽しみ方ができる食べ物」
であると言えるんだと思います。
ーー横倉英城の結びの挨拶。
まあ…。
ここで読んだことは一つの参考意見として、皆さんの心の奥底にしまって、固く鍵をかけてその鍵は海に向かって投げてください(笑)。
下手に知ったかぶりして誰かに言うと、
「はあ?バカか?お前は。」
と一蹴されて悲しい気持ちになったとしても、私は責任取れませんので…。
ま、とりあえず、そんな感じです。
今回は、この辺で。
では、またどこかでお会いしましょう。
最後まで、私の駄文長文にお付き合い頂いた読者の皆さま、本当にありがとうございました!
讃岐うどんは本当に奥深く面白いので、色々と楽しんでくださいね。
(※Written By ヨコクラうどん 横倉英城)
※ヨコクラうどんさんのFacebookはコチラ。
ヨコクラうどん | |
---|---|
住所 | 〒761-8026 香川県高松市鬼無町鬼無136 |
電話番号 | 087ー881ー4471 |
営業時間 | 8:00〜14:30頃(※玉切れ次第終了) ※休みは不定休。月内の第3木曜日、詳細はSNSをご覧ください。 |
|
この記事を書いた人
アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/
- TOP
- 讃岐うどんに関するまとめ記事やネタ情報
- 讃岐うどんの謎「一番釜」。そして、職人が明かす「一番釜」の真実~ 著書 「ヨコクラうどん」横倉英城~