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讃岐うどん CLAPクラップ

讃岐うどんとは何か?核心に迫るコペルニクス的発想~「ヨコクラうどん」の讃岐うどんラプソディー~

2023.02.06

伝統的な讃岐うどん、讃岐うどんらしさという言葉を耳にしますが、その答えとは。

そんな難問に高松市鬼無町「ヨコクラうどん」店主の横倉英城さんご自身に記事をご執筆頂きました。

「ヨコクラうどん」さんは江戸時代から続く超老舗の讃岐うどん店です。

5代目である横倉英城さんが「讃岐うどん」の答えを紐解く、狂詩曲(ラプソディー)な記事が出来ました。

讃岐うどんとは何か?核心に迫るコペルニクス的発想~「ヨコクラうどん」の讃岐うどんラプソディー~

ーー久しぶりの登場「ヨコクラうどん」5代目の横倉英城さん。

ご無沙汰をしておりますが、お変わりありませんでしたでしょうか?
もちろん、私もわかっております。
それほど頭が良いわけではありませんが、これぐらいはわかっております。
別に誰もこの投稿を待っているわけではない、という事実を(笑)。
もっと言うなら、
この「讃岐うどんCLAP」の編集者さんでさえ待っておりません。
 

※遠くを眺めながら、ずっと待ってくださっていた横倉さん。

 
 
 
 
 

ーー記事作成は全て横倉さん。

毎回、原稿は私が勝手気ままに書き殴って、とりあえず「それっぽいもの」ができあがった段階で担当さんに
 
「うどん屋の激務の合間を縫って頑張って書いた記事があるんですけど、普段から親しくさせてもらってますし、僕たちは何と言ってもお互いに『この業界を盛り上げていきたい!』って頑張ってる仲間ですよね?そんなCLAPさんがこの記事を載せない、なんてことはありませんよね?」
 
半ば脅迫めいた、押し売り強盗方式の連絡を入れることで記事を掲載してもらっております(笑)。
今回も原稿を書き上げた旨の連絡を担当さんに入れたところ、三回の既読スルー、その後に二回の居留守を使われた末にようやくコンタクトを取ることに成功いたしました。
 
そして、記事掲載のお願いのために虎のマークの高級羊羹を10本ほど送り込んだ末、ようやく今回の記事の掲載許可をいただくことができました(笑)。
 

「この世で誰1人望んでもいない記事が、2023年も讃岐うどんCLAPさんに掲載されることをお許しください。」と横倉さん。

 
 
 

 



 

 
 
 

ーー讃岐うどんのイメージ。

前回の記事の投稿からかなりの時間的隔たりがあったわけなんですけども、その間にお盆や年末年始など、人の移動が多くなる時期も何度かありました。
コロナによる行動制限や自粛生活などが完全に治ったわけではありませんが、それでも発生当初に比べると徐々に日常生活を取り戻しつつあります。
週末や連休になると、有名うどん店には県外や遠方からのお客様が大勢訪れる様になってきています。
90年代に、麺通団がきっかけとなって日本中に知られることになった「讃岐うどん」も今やブームというよりは完全に香川県のレジャーの一つとして定着しております。
 
ブームの当初の頃に「讃岐うどん」にハマった方々は下手をすると地元の人間よりも遥かに香川のうどん屋さんのことを詳しく知っていることもあります。
お気に入りのお店にひたすら通い続ける人、常に新しいうどんとの出会いを求めて新規のお店を開拓し続ける人、その楽しみ方は色々だと思います。
こうした讃岐うどん歴の長い方々はもう自分なりの「讃岐うどん観」をお持ちでしょうから、大丈夫だと思います。
 
「今度、初めて香川県に行きます」
 
「うどん巡りのために初めて香川県を訪れました。」
 
「今まで本場の讃岐うどんを食べたことありません。」
 
こう言った人たちが、県外の方々が「讃岐うどん」と聞いて思い浮かべるうどん、というのはどういうモノなんだろう?ということです。
 

※「讃岐うどん」とは何を指すのでしょうか。

 
 
 
 
 

ーーそれぞれの「讃岐うどん観」。

現在では「丸亀製麺」さんを始めとする大手うどんチェーン店の出現によって日本国内どの地域にに住んでいても「讃岐うどん」の看板が掲げられているうどん屋には遭遇できるので、「讃岐うどん」と聞くと、どなたでも何となくイメージを持っているのではないかと推測しております。
 
◯安い、うまい、早いの三拍子
◯コシが強い
◯基本のメニューは「かまたま」
◯いりこの効いた出汁が特徴
 
すいません。
ものすごく適当に挙げてしまいました(笑)。
果たして実際に県外の方が「讃岐うどん」に対して抱いているイメージというのはどう言ったモノなんでしょうか?
 

※「讃岐うどん」は食べる人によって、持つイメージや食べる前の期待感がそれぞれ違う不思議なローカルフード。

 
 
 
 
 
 
 

ーーなぜ、人は讃岐うどんを食べに来るのか。

少なくともわざわざ
「現地を訪れて食べてみたい!」
と思われているのですからプラスのイメージであることは間違い無いと思います。
ですので、概ね「安くて美味しい」がイメージとしては強いのではないかと思います。
そして、その「美味しい」の理由の一つとして「コシが強い」ことが挙げられていると考えられます。
ものすごく乱暴にまとめるとすると、県外の方がわざわざ「讃岐うどん」をわざわざ食べに香川県までやって来る理由はその「味を楽しむこと」にある。
 
あれ?グダグダと長話をした割には、ものすごく当たり前の結果が導き出されましたね(笑)
 
「美味しいものがあるから、わざわざ食べに来る。」
 
確かに、これは間違いのない事実です。
香川県のうどん屋さんはどこに入っても本当に美味しいです。
そして、そんな美味しいお店が街のそこら中にある。
こんな特性を持った地域はおそらく日本にもあまりないと言われています。多くの人が県外から訪れてくれる理由としてはそれで十分だと思います。
 

※ヨコクラうどんの蔵から取った「さぬき蔵うどん」。「ヨコクラうどん」の先代が辿り着いた讃岐うどんの答えかも知れません。

 
 
 
 
 
 

ーー讃岐うどんであるための条件。

ここからは例によって完全に私個人の意見になります(笑)
 
「讃岐うどんって何なんでしょうか?」
 
25年ほど前、私は大阪で学生として暮らしておりました。その学校の最寄り駅前の食堂には「讃岐うどん」と書かれた赤い提灯がぶら下がっておりました。駅前を通るたびに
 
「讃岐うどんって何なんやろ?」
 
香川のうどん屋で生まれ育った私は毎日、その赤い提灯を見るたびに何となく不思議な気持ちになったのを今でも思い出します。
 
それから25年の歳月が過ぎて、
 
「うどん屋にだけは絶対にならないぞ!!」
 
そう思っていた私がまさか実家のうどん屋を継いで毎日営業することになるとは、人生とはわからないものです(笑)
 
話がそれましたが、果たして「讃岐うどん」って一体どんなうどんなのでしょうか?
25年前の私が駅前の食堂で「讃岐うどんください。」と注文したらどんなうどんと出会えていたのでしょうか?
当時、一度でもいいからあの食堂に入って「讃岐うどん」を注文するべきだったなと今更ながら少し後悔してます。と、前置きが少し長くなりましたが、実は「さぬきうどん」にも一応、定義はあるんです。
それは全国生麺類公正取引協議会によって示されておりまして、その内容は以下の通りです。
 
「さぬきうどん 」の定義として
①手打ち、または手打ち式(風)のもの
②加水量が小麦粉の総重量に対し、40%以上
③食塩が小麦粉の総重量に対し、3%以上
④熟成時間は2時間以上
⑤ゆでる場合は、ゆで時間15分で充分にアルファ化されていること
 
と上記の条件が示されております。
これらを踏まえた上でかつ香川県内で製造されたものに対して「さぬきうどん」の文言を適用できるとされています。
 

※「讃岐うどん」の話になると真剣な表情になる横倉さん。

 
 
 

 



 

 
 
 

ーー現実との乖離?「讃岐うどん」の定義。

ただし、これには一言補足を加えておかないといけないのですが、上記の条件をクリアしていないと「さぬきうどんではない。」というわけではありません。
「生めん類に関する公正競争規約および公正競争規約施行規則」で定めら得た定義より「本物」、「本場」、「名物」、「特産」などを名乗る場合にだけ、適用されるということですので、県外で営業されているうどん屋さんでも「本物」「本場」などの文言を使わなければ「讃岐うどん」として成立していると考えて問題ないわけです。
 
とまあ、一応「さぬきうどん」を定義づけてはいますけれど、この条件もあくまでも「便宜上」設けてあるだけの様なものなんでしょうね。
実際に香川県のうどん店のうどんでも上の条件を満たしていないものは数多くあると思いますし、まず第一にこれを書いている私自身のお店(ヨコクラうどん)でも満たしていない項目がありますから(笑)。
 

※江戸時代から続く「ヨコクラうどん」さんも満たすことが出来ない、讃岐うどんの定義。讃岐うどんの正体は…。

 
 
 
 
 
 
 

ーー讃岐うどんって何。

現在、香川県には600軒を超えるうどん屋が存在しております。
ピーク時に比べるとその数はかなり減ってきているとはいえ、それでも香川県内ならどこにいても車で10分も走ればうどん屋に行ける程にポピュラーな飲食店です。
 
そして、そのほとんどのうどん屋がそれぞれのお店の大将の個性を色濃く反映させている個人商店になります。
当然、出て来るうどんもそれぞれのお店毎に様々な個性を感じさせてくれます。
 
お店のタイプが一般店、セルフ、製麺所スタイルなどに分かれるところから始まり、麺については太いの、細いの、、エッジが立ちまくってるの、ふんわり柔らか系だの、グニグニしたの、モチモチしたの、真っ直ぐストレートに、縮れ麺などなど。
 
そして、そこにダシとの絡みが加わるとなると、もうその分類はカオスすぎて手に負えなくなってしまいます(笑)
 
そうなんです。
「さぬきうどん」って県外の方が思っている以上に結構バラエティに富んでるんです。
そして、そんな側から見たらカオス的にうどん屋が乱立している状態を地元の人は至って平然と受け入れてくれている、と言うよりも寧ろそれを当然の事として日々、生活されています。
 
そして所謂、オーソドックスなうどんを提供されているお店も、日々新しいスタイルを求めてチャレンジングなうどんを提供しているお店も同じ様に、「毎日の食事の場」として通ってくれる風土があります。
 

※讃岐うどんは香川県、地元民の共有の場であるのかも知れません。

 
 
 
 
 
 

ーー「讃岐うどん」という言葉は何を指す。

私は思います。
「さぬきうどん」って実は「うどん」それ自体を表している言葉ではないんですよね。
 
「日本一狭い面積の県に、日本一たくさんの数のうどん屋が存在している事で、自然と育まれたそこに暮らす人とうどんとの関係性のこと」
 
「さぬきうどん」と言う言葉が示しているのはこう言うことなんだと私は考えています。
確かに香川県には美味しいうどんがたくさんあります。
セルフのお店や製麺所などに出かけると驚くほど安い値段で食べることもできます。
いつまでも残しておきたいと思わせてくれる様な最高のロケーションでうどんを食べることも
 
「一体、どうやって注文して食べるんだ?」
 
と謎めいたシステムのお店と出会うこともできます。
どれをとっても間違いなく「さぬきうどん」です。
でも、それらの部分、部分ばかりを取り出していくら見つめていても「さぬきうどん」の本質にはたどり着かない様な気がします。
何故なら「味」も「値段」も「ロケーション」も「システム」もどれも「さぬきうどん」の一部分でしかないからです。
 

※歴史を紡いできたうどん職人さんたちの一歩一歩が「道」となりました。

 
 
 
 
 
 

ーー「群盲象を評す」。

ある時、国王が六人の盲人たちをそれぞれ象に触れさせて、自分の触れているものが一体何だと思うか?と尋ねた。

足を触った盲人は「柱のようです」と答えた。尾を触った盲人は「綱のようです」と答えた。鼻を触った盲人は「木の枝のようです」と答えた。耳を触った盲人は「扇のようです」と答えた。腹を触った盲人は「壁のようです」と答えた。牙を触った盲人は「パイプのようです」と答えた。

それを聞いた王は答えた。

「あなた方は皆、正しい。あなた方の話が食い違っているのは、あなた方がゾウの異なる部分を触っているからです。ゾウは、あなた方の言う特徴を、全て備えているのです」

 
これは「群盲象を評す」と言う諺の元になった寓話です。
同じ真実に触れていたとしても、それが全体の一部分だけであるならば、それぞれの人間はまるで違うものに触れていたかの様に理解に隔たりが生まれることがある、と示しています。
 
私の思う「さぬきうどん」はこの寓話における「象」の様な物だと思ってるんです。
「うどん」そのものをいつまで触り続けていても決してその本質には届かない様なもどかしさを覚えることがあります。
先ほどの繰り返しになりますが、「さぬきうどん」はこの香川県で暮らす人々の生活の中で生み出されて、親しまれて、長期に渡って共存しています。
ありふれた言い回しになりますが「生活の一部」なんです。
そう考えると「さぬきうどん」の本質を知ろうとするならば、我々の生活から理解しないといけない様な気がしてくるんです。
 
「自転車で5分走ればうどん屋がある生活」
 
「昼食にはうどん玉を買って帰って家で出汁をかけて食べる生活」
 
「一週間に3度も4度もうどんを食べる生活」
 
「地区の行事になると必ずうどんのバザーが出店する様な街の生活」
 
一年通じてこうやってうどんと付き合っている風土。
そしてそこに暮らしている人の生活とメンタリティ。
それらを全部ひっくるめてようやく「さぬきうどん」が成立する様な気がします。
 

※「讃岐うどんは『群盲象を評す』って言葉がぴったり当てはまりまると思います」と横倉さん。

 
 
 
 
 
 

ーー「讃岐うどん」の正体。

ツラツラと書き連ねてきましたが、おそらくここまで読んでくださった人はほとんどいらっしゃらないでしょうね(笑)

自分でも多分、読み返さないと思います(笑)

で、結論。

せっかく香川県に「さぬきうどん」を体験されに来られるのでしたら、是非とも、いろんなところに行って、いろんなモノを見て、いろんな人と出会って、そしてうどんを味わってください。

我々の暮らす街の風景も「さぬきうどん」の一部です。

うどんを味わう様に香川県で過ごす時間をしっかりと体験して「味わって」ください。

そうしたら本当の「さぬきうどん」に出会えるかもしれませんよ。

最後に繰り返して申し上げます。

今回の記事は全てヨコクラの個人的な見解でございます。

くれぐれも第三者にここで読んだ事を口外なさらぬようお願い申し上げます。

万が一公害された場合、あなた自身が変人扱いされる恐れが多分にございます(笑)

よろしくお願いいたします。(※Written By ヨコクラうどん 横倉英城)

※お忙しいところ、お約束のサムネ撮影にも快くお付き合い頂けました。ありがとうございました。

※「クイーンも好きやけど、ジョントラボルタもええでしょ」と横倉さん。

 

 

 



 

 

ヨコクラうどん
住所 〒761-8026 香川県高松市鬼無町鬼無136
電話番号 087ー881ー4471
営業時間 8:00〜14:30頃(※玉切れ次第終了) ※休みは不定休。月内の第3木曜日、詳細はSNSをご覧ください。

この記事を書いた人

アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/

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