本広監督に「讃岐うどん」について聞いてみました〜「讃岐うどん」というブランド〜
香川県丸亀市出身の映画監督である本広克行監督にインタビューさせて頂きました。
本広監督に香川県のソウルフード「讃岐うどん」について、色々な角度から質問させて頂きました。
また、先の見えないコロナ禍で苦しむ香川のうどん屋さんにもメッセージも。
讃岐うどん好きな方はぜひご覧ください。
本広監督に「讃岐うどん」について聞いてみました〜「讃岐うどん」というブランド〜
ーーお気に入りの讃岐うどん巡りのルートは。
今はコロナ禍ですので、ここ1〜2年は香川県に帰れてないですけど。
仕事関係でどなたかをお連れしている場合は、ある程度のルートがありますね。昔は必ず立ち寄るうどん屋さんというのがありましたけど。今は、そのお店さんもお辞めになられてますから。
自分の仲の良い人たちでうどん屋さんを好きに回るという時は新店狙いで行ってます。
基本的には、新しく出来たうどん屋さんとお知り合いのうどん屋さんで回りますけど…本当にその日の気分次第なんですよ(笑)。
ーー香川県のうどん屋さんと東京のうどん屋さんの違いは。
東京でも自分が美味しいなと感じる、うどん屋さんがいくつかありますけど、普通に美味しいですよ。
でも、香川県で食べるうどん屋さんの「美味しい」のバリエーションは本当に多いと思います。
うどんが美味しい、お出汁が美味しい、天ぷらが美味しいとか。あとはお店毎に、あそこはひやが美味しいとか、太い麺が美味しい等々の本当にカテゴライズの違う美味しさが多いことですね。
さらに、うどん屋さんに食べに行く時間帯で提供されるうどんに違いがありますから。自分の中では、あそこのお店は朝が良いとか、あそこは閉店前でも美味しいとかね。それに自分のその日の気分も加わりますから。お店選びは本当に迷います。
ーー讃岐うどんと映画制作の共通点は。
きっと、うどん屋さんにとっても、日々の経営は大変なものですよね。
映画自体は自分でお金を出して作っているわけではなく、自分にお声を掛けて貰ってはじめて作れます。周囲から求められているものを作り続けなければいけないことは、うどん屋さんと似ているかも知れませんね。
映画の場合、予算をかけた大きな映画は回収しないといけませんから。作った映画がヒットせずに回収が出来ないと、僕たちに次の映画制作のお声は掛からないんですよ。回収出来れば、次の機会はありますけど、当たらなかったら、それで終りです。
香川のうどん屋さんも近いものがあるかも知れません。
映画業界、エンタメ業界も大変厳しいですから。最近はNetflixやAmazon等の配信で作品を作ることが多くなって来ています。
特にコロナ時代は、制作現場でも自粛しながら作るので、これまでの映画の作り方とは全然違って来ています。
ーー最近はSNS等で発信が上手なうどん屋さんが多い。
うどん屋さんって簡単じゃないですよね。
一杯のうどんを作るのに、もの凄く時間もかかるし、毎日の仕込も深夜や早朝になりますから。他のことは考えられないですよね。僕の知り合いのうどん屋さんは
「休みはしっかり休んでおきたい」
と仰られてますから。
先日、Clubhouseでご一緒した、よしやさんやSIRAKAWAさんのチームは一度、都会に出て帰って来られている方が多いですよね。その違いは大きいと思います。
香川県でずっと、うどん屋さんだけを続けているお店さんは、毎日の営業で疲れちゃって、中々そこまで手が回らないんじゃないですかね。
がもうさんは夜中12時とかに起きるとか言ってましたからね。うどん屋さんは本当に大変です。
ーー讃岐うどんの面白さは。
讃岐うどんはブランディングに完全に失敗してるんですよ。
だから、いつまで経っても低予算で作らないといけないんですよね。値段を上げてしまうと、香川県民の方から「高い」と言われちゃうんです。
一方で、蕎麦は普通に一杯1,000円以上が当たり前なのに…、ラーメンもそうじゃないですか。
でも、讃岐うどんで一杯1,000円だと、多方から文句を言われてしまう…。
そこが讃岐うどんの面白さです。
香川県のうどん屋の店主さんたちは、損得抜きに朝早くから仕込みを体がぶっ壊れるまでやり続けてますね。そういう、背景にある儚さみたいなことが面白さの要因です。
ーー思い出の琴平の「宮武うどん」。
昔、琴平にあった「宮武うどん」の大将に取材させて貰ってことがありました。取材を通じて、宮武の大将は本当に、毎日うどんのために鍛錬されているんだなと驚きましたね。
いろんな面白いお話があるんですけど。
当時聞いたお話では、大将は毎日毎日、夜中の2時に起きて、仕込みをされるんですけどね。もちろん、誰もが知っている名店で、香川県内でも指折りに美味しいと評判のお店なんですけどね。
閉店前になると「どうしたんだ、何があったんだ!?」と言うくらい、うどんの調子が悪い日があるんです(笑)。
「開店したばかりの午前中のうどんは、ムチャクチャ美味しいんだけど…。閉店間際に食べに行くとあれっ?てなる時がある」と言う話は、うどんに厳しい、地元の方々の間でも、割とあるある的なお話だったみたいです(笑)。
そんな大将が突然、本気を出して作るうどんはムチャクチャ美味しいんです。残念ながら、今はお体壊されて、辞められちゃいましたけど…。
讃岐うどんはそういう、掴み所のない面白さがあると思います。
うどん作りを純粋に極める方がいる一方で、フランチャイズで大きく店舗展開していこうと言う若い方々もいらっしゃいますから。
讃岐うどんと言うのは、本当に不思議な形態ですよね。
ーー讃岐うどんに厳しく、シビアな香川県民。
それはもう…、厳しいですよ(笑)。
香川県民で僕の知り合いの人なんかでも、少しでも美味しくないと文句言いますから(笑)。
店主さんがどれだけ苦労されて、一杯のうどんを作っているかというのは、意外と地元の方も分かってないですよね。
讃岐うどん業界も、急に新しいことに挑戦したり、変えようとするとね、かなり高い確率で反発されることもあるでしょうしね。
一杯をたった250円くらいで、これだけ美味しいもの食べれてるんですけどね。
そこは、香川県の方には日常で、当たり前になっちゃっているのかも知れません。
ーー東京での讃岐うどんの見せ方。
弟が夫婦で東京都内でうどん屋をやっていましてね。
東京で讃岐うどんっぽさを前面に出したくて、製麺機や小麦粉なんかを選んでいくとすごいお金がかかるんですよ。
当時は香川県と同じように、一杯200円くらいで提供していたんですけど赤字が続いて。価格をかなり上げたんですけど、意外とすぐに落ち着きましたね。東京の方は価格にあまり、こだわりないみたいでしたよ。
「食べると、痩せるうどん」
みたいなのがあれば、女性人気が出て流行るかも知れませんね。
弟夫婦へも、栄養士さんたちから、色々と新メニューのアドバイスを貰って伝えるんですけど、日々の営業メニューで一杯一杯ですよね。
讃岐うどんも進化しようと思うと、オシャレに綺麗にして、丼や盛り付けにこだわったり、高松市内に出すとかすると面白いかも知れませんよね。
ーーベストな讃岐うどんは。
個人的には開店して、初めての釜に入れて作る。手探り感のあるうどんが好きです。
開店して、一発目のうどんはドロドロしていないんですよ。お湯がきれいですから。
二発目以降はどうしても、うどんを茹で上げた際のとろみみたいなのが出ますから。閉店間際になると、もうドロドロになりますよ(笑)。それが好きな人もいますけどね。
僕のベストな讃岐うどんと言えば、僕は開店一発目の綺麗なうどんということになります。
Clubhouseで香川県うどん屋の大将たちとお話しした時に、ベストな釜の状態の時間帯を聞き出したりしました(笑)。コロナが落ち着いて、香川県へ帰った時は、その一番釜の時間帯でうどん屋さんのルートを組みたいなと思ってます。
ーー讃岐うどんの魅力は。
抜群に美味しいことですよ。
伝統的な作り方は確かにあるんですけど、うどん発祥の起源というのは、実は誰も分からない。
そのミステリアスな食べ物である「讃岐うどん」に対して、地元民が厳しく判定したり、熱く語り合ったりする…。そういうところが魅力ですね。
それに、今の香川県のうどん屋さんはどこも本当に美味しいですよ。特に最近の若い大将がつくる、うどんは美味しくないところがないですから。
麺通団の方々の影響も非常に大きいですよね。
田尾さんたちがやられたのは、そこにあるものをそのまま情報として届けたことですね。革新的に何か新しいことをやろうとしていないんですよね、本当にありのままを伝えた。それがまた面白かったわけです。
それに田尾さんたちを喜ばそうとしている人たちも加わって、一大ムーブメントになりました。
ーー映画「UDON」の撮影時のお話し。
現在で言うBUZZった状況になりましたね。
香川県ではジブリの映画よりも売上が良かったらしいです(笑)。
映画の後は、香川県のうどん屋さんの開業数も劇的に増えたそうですね。ただ、それはバブルなので、必ずはじけるんですよ。なので、倒産するうどん屋さんも多かったと聞いています。
映画の中でも、ブームの功罪を描いていますけど、続けると言うことは本当に難しいです。経営の仕方もありますしね。
ーー香川県のうどん屋さんへ。
貫いてやり抜くと言うことは、何でも大変だと思います。
老舗のうどん屋さんでいえば、2代目は絶対に先代の味を継承しなければ、お客さんは離れて行ってしまいます。
うどん屋さんの持久力たるや、本当に壮絶なものです。
やるからには、今まで通り、覚悟を持って続けて頂きたいです。特に香川県では続けていくには、それくらいの覚悟がないと続けられないですよね。
例えば、がもうさんが急に太麺で釜揚げうどんをやり出したら、みんな「何てことするんだ!?」となりますもんね(笑)。
やっぱり、みんなが思っている、がもうさんの味、がもうさんのうどんと言うのがあるんですよ。
コロナ禍で本当に大変だと思います。
でも、やるからにはこの苦しい時期も乗り越えて、貫いてやり抜いて欲しいなと思います。これで残れたうどん屋さんは、文句なしの格好良さがありますから。
本当に大変だと思います。でも、続けていく、貫いて頂きたいです。お体に気をつけて頑張ってください!
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この記事を書いた人
アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/
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