
作家村上春樹氏が「さぬきうどん巡り」を体験していた!巡ったお店をコラムとともにご紹介

今では、すっかり有名となった讃岐うどん。
県外から多くの人が「さぬきうどん店巡り」に香川県に訪れています。
しかし、そんな讃岐うどん巡りのブームが起こる前の1990年代に、あの作家村上春樹氏が「さぬきうどん巡り」をされ、さぬきうどんの魅力をたっぷり紹介しています。
一体どこのお店を訪れたのか。
村上春樹氏はどのような感想を持ったのか。
村上氏のコラムとともにお店の紹介を致します
さぬきうどんは超ディープ!
今回、ご紹介する本は、1998年に発行された村上春樹著「辺境・近境」です。
1991年「ハイファッション」というファッション雑誌でコラムを書いていた村上氏。
当時の担当者が、香川県出身者で、顔を合わせるといつも讃岐うどんの話をされていたようです。
もともと、村上氏はうどんが好きであったうえに、その担当者が讃岐うどんの話をすると、とても美味しそうに聞こえてきて、ひどく讃岐うどんが食べたくなったそうです。
それならばと、ファッション雑誌とは無縁のようなうどん食べ歩きのコラムを書くことになったようです。
そして、世界各国を旅して書いたコラムをまとめた本書に「讃岐・超ディープうどん紀行」として掲載されました。
一部ご紹介しますと
冒頭・・・
”あるいは、香川県という土地には他にもいろいろと驚くべきことがあるかもしれない。しかし僕が香川県に行ってみて何よりも驚いたのは、うどん屋さんの数が圧倒的に多い事であった。
(中略)
あるいは中には、うどん屋なんて全国どこに行ってもだいたい同じだろうと思われる読者もいらっしゃるかもしれない。しかしはっきり言って、その見方は間違っている。
香川県のうどん屋のありかたは他の地方のうどん屋のありかたとは根本的に異なっている。
ひとことで言えばかなりディープなのである。
ちょうどアメリカの深南部に行って、小さな町でなまずのフライを食べているようなそんな趣さえある。”
結びは・・・
“香川県のディープサイドで食べたうどんにはしっかりと腰の座った生活の匂いがした。
ああ、ここの人たちはこういうものをこういう風に食べて暮らしているんだなあというしみじみとした実感があった。
香川県の人々がうどんについて話をするときには、まるで家族の一員について話している時のような温もりがあった。誰もがうどんについての思い出を持っていて、それを懐かしそうに話してくれた。
そういうのってなかなかいいものだし、またそういう温もりがうまみを生むのだと僕は思う。
しかし「中村うどん」は凄かったよな。”
村上氏も香川県のうどん屋さんの特異性や県民のうどん愛を感じて貰ったようです。
なかむらうどんには色んな意味で衝撃を受けたようですが・・・
では、村上氏は一体どこのお店を訪れたのか。
掲載されているお店は
店名 | 場所 | お店紹介 |
小縣家 | まんのう町 | みんなが、大根をおろしている奇妙な情景 |
なかむらうどん | 飯山 | ディープ中最ディープのうどん屋 |
坂出山下うどん | 坂出市 | 郵便局集配職員休憩所のうどん屋付製麺所 |
がもううどん | 坂出市 | ロケーションがだんぜんお気に入りの店 |
久保うどん | 高松市 | ※現在廃業 |
では、村上氏の文章とともに一部のお店をご紹介していきます。
店の中の客みんなが、大根をおろしている奇妙な情景
ーー元祖しょうゆうどん小縣家
香川県の西部、国営讃岐まんのう公園の近くにお店を構える「小縣家」さん。
「元祖しょうゆうどん」と看板を掲げるお店です。
訪れた村上氏の感想は、
“四国に着いて最初に入ったうどん屋では、店に入るとまずおろし金と長さ20センチくらいの大根がテーブルに運ばれてきた。
なんだなんだこれは、と思ってまわりを見ると、客がみんなまじめ顔をしてこしこしこしこしと大根をおろしているのである。しょうがないので、僕も大根を右手に持ち、おろし金を左手に持って、こしこしこしこしと大根をおろした。
うどんを注文してからゆであがるまでに15分くらいかかるので、手もちぶさたを解消するのにはいいけれど、でも店の中の客がみんなで大根をおろしているというのは情景的にかなり奇妙なものであった。
(中略)
せっかく四国まで来たのだからと思って、僕もこのディープな醤油うどんを試しに食べてみたのだが、これはけっこういけた。
シンプルにして大胆、蕎麦でいうとちょうど「もり」の感覚である。古くなってのびてしまったようなうどんでは無理だが、打ちたての勢いのあるうどんに醤油をかけて、葱だけを薬味にしてつるつるつると食べる美味さには、思わず膝を打ってしまいそうな説得力がある。”
こちらのお店は、大根をお客様自らがおろすことで話題のお店です。
1軒目から讃岐うどんの魅力を感じられたようです。
元祖しょうゆうどん「小縣家(おがたや)」 | |
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住所 | 香川県仲多度郡まんのう町吉野1298-2 |
電話番号 | 0877-79-2262 |
営業時間 | 9:30~15:00 定休日:月曜・火曜 |
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ディープ中最ディープのうどん屋
ーーねぎを裏の畑から自分で取って切る「なかむらうどん」
続いて訪れたのが、飯野山(讃岐富士)の近くにお店を構える「なかむらうどん」
当時は、究極のセルフサービスとして人気を集めたお店です。
さて、村上氏の感想は、
“さて次に行ったのが丸亀の近くにある「中村うどん」だが、ここは文句なしに凄かった。
ディープ中最ディープのうどん屋である。ひどく交通不便な場所にあるうえに店の場所もわかりにくいので、一般旅行者にはまったくお勧めできないけれど、マニアックにうどんの好きな方にはぜひ試していただきたいと思う。苦労して行くだけの価値のあるうどん屋である。”
実際どんな感じだったかと言いますと
・建物はうどん屋というより建設現場の資材小屋みたいに見える
・客が並べて置いてあるうどん玉を勝手に湯がいて、だし汁なり醤油なりをかけて食べ、勝手にお金を置いて出ていく
・丼を持って外に出て、石の上に腰掛けて食べる
・裏の畑からお客が自分でねぎを取ってきていた
など、シチュエーションや大将にかなりの衝撃を受けたようです。
そして、2杯目に打ちたてのうどんを食してひとこと、
“さっき食べたうどんもかなり美味しいと思ったけれど、この打ちたてのうどんの香ばしさと腰の明快さに比べたら、ランクがひとつ違う。
まさに痛快アル・デンテである。
このうどんは今回の取材旅行で食べた沢山のうどんの中でもまさに珠玉のひと玉であった。中村うどんに行って、できたてのうどんに巡り会えた人は幸せ者と言うべきであろう。”
現在は、大将も変わり、店舗も改装され、裏の畑でネギを自分で取りにいくこともなくなりましたが、変わらず人気のお店です。
なかむらうどん | |
---|---|
住所 | 香川県丸亀市飯山町西坂元1373-3 |
電話番号 | 0877-98-4818 |
営業時間 | 9:00~14:00 定休日:火曜日 |
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その他のお店紹介
他にも数件食べ歩きをされていますのでご紹介します。
ーーロケーションがだんぜんお気に入りの店「がもううどん」
讃岐うどん界では今も変わらず常に人気の「がもううどん」。
数々のランキングで常に上位に顔を出すほど評価されています。
坂出市の田園の中にお店を構えています。
そののどかな風景を見ながらうどんを食べる事を大変気に入られたようです。
現在は、あまりの人気ぶりにお店の前には広い駐車場が出来、風景は少し変わってしまいましたが、今でも丼を片手に屋外のベンチに座って、のどかな雰囲気を楽しみながらうどんを食べているお客様の姿が見られます。
住所…香川県坂出市加茂町420-1
営業時間…営業時間 8:30~14:00
店休日…日曜日、月曜日
ーー郵便局集配職員休憩所のうどん屋付製麺所「坂出山下うどん」
がもううどんの近くにある「坂出山下うどん」。
大きな釜と薪で炊き上げるうどんと雰囲気を味わってください。
お店の取材記事はこちらから➡
昭和34年創業の坂出市「山下うどん店」のうどんづくりを取材。
皆さんいかがでしたか。
村上春樹氏も讃岐うどんのディープさ、多様性に魅了されたようです。
村上春樹氏のコラムとともに、同じお店を回ってみても楽しいかもしれませんね。
©新潮社 村上春樹「辺境・近境」より引用
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この記事を書いた人
セイジ・コシ・ASW(株)一誠社http://isseisha.co.jp/
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