高松市新田町「とにかく とに麺」〜何気ない一杯に込められた店長の創意工夫〜
高松からさぬき市志度へ抜ける、県道沿いにあるセルフ店「とにかくとに麺」さん。
オリジナルメニューが人気、広い店内で家族連れの方も安心出来る入りやすいうどん店です。
今回は店長の松田さんにお話をお伺いしました。
高松市新田町「とにかく とに麺」〜何気ない一杯に込められた店長の創意工夫〜
--「とにかく とに麺」店名の由来。
オーナーは高松市内で「トニケン」ていう建設関連事業をやってる企業の社長で「とに麺」の「とに」はそこから来ています。
僕は元々居酒屋で働いていたんですけど、社長から
「まっちゃん、うどん屋やりたいから店長やってくれんか」
って言われたんです。
うどん屋はそんなに簡単にできるものじゃないと知ってたので、その時は
「僕はやりたくないです」
って断ったんですが(笑)。
何年か過ぎた後に本当にうどん店を出してたのが、このお店なんですよ。
ーーOPEN時のお話。
オープン時の従業員は3人でした。そこにバイトで入った私ですね。
3人が飲食店の経営者だったんですが、うどんは未経験。
当時の副店長が綾川町にある「岡製麺所」さんの親戚だったので、そこで少し修行してうどんの作り方を習って来たんです。肉うどんのレシピもいただいたので、うちの肉うどんの味は岡製麺所さんゆずりなんですよ。オープン当初は機械の使い方も分からなかったので、みんな試行錯誤してやってました。
OPEN最初の頃はすごい数のスタッフがいましたね。
「午後3時にお店に入ってくれ」
って言われたので、バイトに来たら玉切れ終了になってて
「僕は何しに来たんですか?」
って(笑)。
しょうがないからいきなり仕込みをやったりしました。
その後は、スタッフも半分近くなり、結局残ったのは僕だけでした。思い返せば、僕はコロナウィルスが流行った時期に店長になりましたので大変でした(笑)。
--がらりと変わったうどんの秘密。
オープン当初のうどんは年中同じ太さだったんですけど、今は季節によって太さを変えています。
夏場はすするのにのど越しが良い細麺。
そして、冬場はもっちりするため太く。
当時からすると1.5倍ぐらい太さが違うかも知れませんね。実は夏場に切り方を間違えてしまい、少し細くなってしまったのを仕方なく出したんですが、お客さんから意外に好評だったんで、太さを変えるようになりました。
いきなり変わるんじゃなくて、寒くなってきたら徐々に太くして、暑くなったら徐々に細くしています。
ーーとにかくこだわり続けるうどんづくり。
小麦粉はオーストラリア産です。複数の製粉会社の粉をブレンドしています。同じ銘柄の粉でも、その都度質が違いますから、ブレンドすることで味を安定させているんですね。
うちの麺の加水率は若干高めですけど、そもそも小麦粉って時期によって含まれてる水分量が違いますからね。
夏と冬では12リットルと13リットル、季節で1リットルも変わるんですよ。
最初の頃は、前の晩にできるだけ生麺を切って用意していたんですよ。その方が朝が楽ですから。でも茹でていない生麺でも、時間が経つとコシが弱ってくるんですよね。
だから、団子のまま一晩寝かせて最後に圧をかけて鍛えています。延ばして切り立てを茹でると全然違う。水で洗った時も肌触りも全く違って
「これ切り立てやなあ」
ってすぐ分かりますよね。
切り置きだとゆがき立てでも柔らかいんですよ。切って1時間経っただけで全然変わります、やっぱりうどんは生き物だなあと感じますね。
今ではできるだけ切り立てを出しています。スタッフの人数が減った分大変なんですが、そこは頑張っているんですよ。
小麦粉は以前の方が高いのを使っていたんですけど、味は絶対前より良くなってると思います。
ーーうどんづくりのこだわり。
厨房にかなり大き目のうどんを茹でる丸釜が据えられているんですが、最初は正直邪魔に思っていました。
「こんな大きいのいらんやろう」
って。
でも使っているうちに、大量のお湯の中でうどんを踊らせながら茹でると、茹でムラ無く仕上がるのが分かったんです。四角い釜は角の麺がすくい難いんですが、丸釜だと丸網ですくう時もキレイにすくえるし…お湯もなかなか沸かないしガス代も余計にいるんですけど、大きさや形にも意味があるんだと学びましたね。
ダシは若干甘めで、優しい感じにしあげています。お客さんに年配の方が多く、辛いのを残される傾向があるのに配慮しています。ぶっかけのダシは濃い目ですがこちらも甘口です。
ダシに入っているのは鯖節とカツオ節と昆布で、イリコは入っていません。最初はイリコが入っていたんですが、イリコはちゃんと見ていないとすぐエグ味が出てくるんですよ。人手をそちらに回せないので苦肉の策でイリコを外したんですが、それが今ではうちの特徴になっています。
--ちょっと変わったオリジナルメニュー。
オリジナルメニューの「鶏ぶっかけうどん」はなかなか好評です。
これしか食べない常連さんもいらっしゃいますね。煮込んだ鶏が乗っているうどんは、県下でも珍しいんじゃないでしょうか。
最初は国産の鶏を使っていたんですが、実は原価がすごく高くて儲けがほとんど出なかったんです。それで安価なブラジル産に変えたんですけど、ブラジル産の鶏肉は少し臭みがあるんですよ。国産鶏はそのまま使えば良かったんですが、ブラジル産は一度水洗いして酒で揉んでから火を通す。ちょっと一手間かけるだけで、ほとんど味が変わらなくなりました。
さらに、突き詰めると牛と鶏があるから豚もやりたくなって。これはうどんじゃなくて丼なんですけど、豚丼がほぼ完成しています。後はどれだけ柔らかく仕上げられるか、このメニューをいつ出すかですね。
ーー讃岐うどん激戦区に位置する店舗として。
この店の場所って、元々周りにうどん屋さんがたくさんある激戦区だったんですよ。それに安い定食屋さんが付近にないんですよね。
だから社長に
「うどん屋じゃなくて定食屋で勝負したら」
って言ったこともあるくらいですので、勝手に丼物を作って、メニュー化して出すようにしていました。一時は、新メニューの開発がうどんより多かったんじゃないですかね(笑)。
ご飯物は「とり飯」や「しめじの炊き込みご飯」など、季節によって変えています。冬場は「かき飯」、春は「タケノコご飯」とかね。
天ぷらも変わったのがありますよ。ご飯とカレーを混ぜて、福神漬けを付けて揚げた「カレーライスの天ぷら」は、おやつ感覚で子供に人気でした。
たまにやっています期間限定メニューは、丼をうどんに変えたらいいのでは…という発想なんです。
肉味噌うどん、麻婆うどんとかシチューうどんとかね。シチューはそのままだとうどんには薄いので、チーズを混ぜたりしています。
良い素材が入ったら、突発的に限定メニューを出したりもしていますが。この辺り柔軟に対応できるのは、居酒屋の経験が生きているのかも知れませんね。
天津飯みたいなのとかしっぽくもやりたいんですけど、手が回らなくて実現していません。手の込んでるメニューがヒットしすぎると忙しくなりすぎるので、その辺りの兼ね合いがも難しんですよね。
−−日々の疑問と試行錯誤が原動力。
残念ながら僕はそんなにうどんが好きではないんです(笑)。
店に入って最初教えられたことも
「何でこんなことをしてるんだ」
って思ってました(笑)。
けど、ずっと疑問ばかりだったからこそ、色々試行錯誤して日々新しいことを研究追求してこられているんだと思います。
セルフうどん店ですので、食材にお金もかけられないし、うどんも機械で打っていあます。
それでも、創意工夫次第でもっともっと良さを出して行ける。時間も人手もない中で、どこまで工夫で対応できるかですね。
毎日のふとした瞬間の疑問を自分なりに工夫して解決して、美味しいうどんを提供することが、とにかく楽しいんですよ。
とにかく とに麺 | |
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住所 | 〒761-0102 香川県高松市新田町甲999-1 |
電話番号 | 087-813-9102 |
営業時間 | 平日/10:00~14:00 (麺がなくなり次第終了) 土、日曜・祝日/6:00~14:30 ※休みは木曜日 |
この記事を書いた人
アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/
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