ーー常識を覆されたプラントベースの味噌ラーメン。

東京の自由が丘にあるプラントベースのレストラン「菜道 SAIDO」さんの味噌ラーメンを食べたのがきっかけです。

食べる前は、大変失礼なお話なんですが

「ヴィーガンベースの味噌ラーメンなんて、きっと薄味で、僕にとっては食べ応えないだろうな」

くらいに思って食べたんですけど、ひと口食べた瞬間に衝撃を受けました。

普通の味噌ラーメンと同じくらい満足感があって美味しかったんです。ただ、美味しいだけでなく、自分の想像の遥か上の領域の美味しさだったので本当に驚きました。

僕は香川県民で、麺類といえば讃岐うどんですから。

これで、讃岐うどんをつくれば美味しいんじゃないか。ヴィーガンや健康志向に沿った新しい讃岐うどんが出来て、現代の食に関わる色々な問題も解決出来るんじゃないかと感じたんです。

「菜道 SAIDO」の楠本オーナーにその場で、お話しさせて頂きまして

「一緒に讃岐うどん屋をつくりたいです」

と伝えました。楠本オーナーも

「やりましょう」

と仰って下さって、その瞬間にプラントベース×グルテンフリーのうどん屋をつくることを決めました(笑)。

※「クリエイティブの力に限界はないです。アイデアと実行力で世の中は変えられます」と村上社長。

※香川県のうどん屋では見ることは少ない色とりどりで鮮やかな野菜が楽しめます。

ーープラントベースの料理、ヴィーガンのこと。

元々「動物性のものを食べない」というのは、宗教や個人の主義もあると思いますが。アレルギーで食べたくても、食べられない方がいるということが一番辛いことだと思います。

僕の息子も乳製品アレルギーと牛肉にアレルギーがあって。

カレーうどんや肉うどん、ケーキやチョコレートとか、色々食べたいんですけど、食べることができない。

人間にとって「食」は最も身近な娯楽ですから、それが制限されるのは本当に辛いですよ。

友達と食事に行った際にアレルギーの方でも、安心して食べられるレストランが日本にはまだまだ少ないと思います。

海外の方はヴィーガンやハラルの方が意外といらっしゃって、インバウンドの方々も日本国内で「食」の場を探すのに困っている状況です。

もしも、それらの課題をクリアするレストランが出来れば…アレルギーやヴィーガンが「食」を楽しめる世界が提供出来る、解決出来ると思いました。

マイノリティーの方が、我慢しなければいけない社会は不公平だと思います。

そこは、企業が解決する問題のひとつでもあると思います。

※徹底して、当事者の立場に憑依して考えることが課題解決の近道だそうです。

※トマトを見てもこの色とりどりの鮮やかさ。気持ちが明るくなります。

※讃岐うどんとは思えない、盛り付けはフレンチのコース料理を想起させます。

ーープラントベース×グルテンフリーのうどん。

プラントベースのレストランだけであれば、まだよかったんだと思います。

難しいかったのは、グルテンフリーのうどんをつくらなければいけないことです。

自分が最初に決めたことは、プラントベース×グルテンフリーの讃岐うどん店をつくることですからね。

グルテンフリーということですので、米粉でうどんをつくることに決めました。

そこから、香川県内のうどん屋さんや製麺会社さんに色々と相談させて頂きましたが、米粉で製麺するということは技術的に難しいんです。品質を担保しながら、一定量の生産を確保するということがクリア出来ませんでした。

製麺会社さんに相談させて頂いたのですが、工場の製造ラインで併設するラインで製麺をする限り、どうしてもコンタミネーション(意図せず混入してしまうこと)が発生してします。小麦粉の混入をゼロにする確約が出来ないんですね。

だったら、ウチの店舗でグルテンフリーの環境下で自家製麺を作ろうということになりました。

※米粉でつくられたうどんは、本場讃岐うどんと寸分違わない出来栄え。

※「アイデアファーストと決定したコンセプトに従うことが仕事においての約束事なんです」と村上社長。

ーー新しい挑戦「コース料理で提供する讃岐うどん」。

香川県のセルフ讃岐うどん屋さんと同じように「安い・早い・美味しい」だと、いつも食べる讃岐うどんと変わらないと感じられるため、讃岐うどん業界では今までになかった提供方法を考える必要がありました。

当店のメニューはコースのみで、ランチで2,000円〜です。

グルテンフリーの讃岐うどんを一杯の単品で販売すると、讃岐うどんとの比較になります。でも、プラントベースの料理＋グルテンフリー讃岐うどんでコース料理として提供すると、比較対象がレストランのランチコースとの比較になり、価格が高いと思われなくなると考えました。

お客様も食材や料理の手間暇がかかっているのを理解してくださっています。

「値段安いですよね」

「これだけの料理なら、もう少し払ってもいいのに」

と大変満足してくださっているのは、嬉しいです。

でも、一番嬉しかったことは、小麦アレルギーで麺類を食べられない方が

「アレルギーで麺を食べない人生でしたが、こちらのお店のおかげで麺が食べれる人生に変わりました、本当にありがとうございました」

と感謝の言葉を頂いた時は、僕も嬉しくて泣いてしまいました。

※「by age 18」の料理は全てコース料理です(※写真はオフィシャルサイトより)。

※コースの〆はデザートもあります(※写真はオフィシャルサイトより)。

ーー決めたコンセプトは必ず守る。

プラントベース、グルテンフリーで特にアレルギーの方に対して、ハウスダストなども配慮しなければいけません。

建物も鉄筋ではなく、木造で建築しないとハウスダスト対策が出来ないですし、お年寄りや車椅子の方も安心して寛げるようにエレベーターも設置しています。

お店の性質上、ゆっくり料理を楽しんでいただきたいので、瀬戸内海の景色が一望できる場所にしています。

自分が最初に宣言したこと、決定したことは絶対に守らないといけません。

それは、マイノリティやヴィーガンの方、健康志向の方等、当店のコンセプトを信じて来店してくださっているお客様との約束ですから。

僕はクリエイターなので、コンセプトに従います。

自分たちが出来ることをやるのではなく、コンセプト通りにやることが全てなんです。

※「マイノリティの方々が不自由なく暮らせる社会を実現したい」と村上社長。

※グルテンフリーのうどんに色とりどりの野菜が映えます。

ーー讃岐うどんの楽しさ。

讃岐うどんはシンプルですけど、全部違う。

どちらのうどん屋さんも同じじゃないですよね、そこが楽しい。

あとは、地元の方々の讃岐うどん愛が強すぎることですね(笑)。

食べる方も皆さん、熱い気持ち、うどん屋さんを愛する気持ちがありますから…こんなソウルフードは香川県、讃岐うどんだけでしょうね。

ウチの店も少しづつですが、そのような地元の方に認められてきたかなと感じることがあります。

嬉しい限りですし、少しホッとしています(笑)。

意外だったのは、香川県のうどん屋の大将たちが応援してくれたことです。皆さん、本当に親切で優しいですよ。

開業当時には、うどん屋の大将たちが来店してくれまして

「これはうどんや」

と仰って下さったのが、本当に嬉しくて、今でも支えになっています。

※「ここから見える志度湾の景色が好きなんです」と料理全般を担当する西森店長。

※グルテンフリーの麺が完成するまで構想2年、実際に完成するまでは製麺のみを何ケ月も試行錯誤されたそうです。

ーー常識をひっくり返す「by age 18」。

お客様からまず、

「この店名って何て読むの？」

と言われます(笑)。

さらにロゴは上下反転していますので、

「何の店なん？」

と興味や疑問を持って貰えています。

アインシュタインの言葉で人間の常識は18歳までに蓄積された先入観であるという意味なんです。

初めてのお客様から店名については、必ず質問されますので、お客様とのコミュニケーションの良いきっかけになりますよね。

その際に、スタッフ自身が店名の由来である「常識を覆す」というコンセプトを口に出しますので、本人たちもその気になって、プライドを持って頑張ってくれています。

自分の願いや思いは口に出すことは大切です。

※「店名に恥じない料理を出さないといけませんので。日々、試行錯誤しています」と西森店長。

ーーおすすめは「ぶっかけうどん」。

コース料理なので、単品でのうどんの提供はしていませんが、よく出るうどんは「ぶっかけうどん」です。

野菜が多く、農家さんから新鮮で美味しい、品質も抜群ものを選りすぐりの野菜をたっぷり使っています。

※ぶっかけの既成概念を覆した「ぶっかけうどん」。目で見ても美しい。

※旬の新鮮な野菜がたっぷりで麺が見えません。うどんも野菜も主役なのです。

ーー讃岐うどんをもっとクリエイティブ。

讃岐うどんは世界に通用するグローバルな料理になる可能性があります。

素晴らしい伝統と令和の問題解決や付加価値を加えれば、さらに讃岐うどん業界も発展出来るんじゃないかなと思います。

実際、他業種の新参者である僕が、うどん屋の大将たちに相談を持ちかけた時も、大将たちは本当に優しくて親切で、熱い情熱をお持ちで開業を後押ししてくれました。

うどん業界でない、余所者の自分だからこそ、逆に出来ること、うどん業界に貢献出来ることがあるのではと思っています。

長い伝統があるということは、制約や先入観が先行してしまいます。

それでも、讃岐うどん業界の諸先輩方々は既存の常識を打ち破り、讃岐うどんを現在のステージに押し上げられたと伺っています。

これからも諸先輩方々にリスペクトをして、僕だから貢献出来ること、変えられることを実行していきたいですね。

※「新しい概念から生まれたうどんもあって良いと思います」と村上社長。お忙しいところ、ありがとうございました。

※「by age 18」はコース料理のみですので、ぜひご予約ください。ランチ、ディナーにカフェタイムもあります。