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綾歌郡宇多津町「亀城庵(きじょうあん)」~藤井社長が語るうどんグローバルと讃岐うどんイノベーション~

2021.08.10

今回はお取り寄せうどんでお馴染み亀城庵(きじょうあん)庵主であり、㈱讃匠の代表取締役でもある藤井薫社長にインタビュー。

藤井社長は製麺卸業の亀城庵(きじょうあん)の創業者。

また、製麺機製造の㈱大和製作所の代表であり、そしてYouTuberでもあり、ご自身で讃岐うどんについて発信し続けています。

うどんのスペシャリスト藤井社長に讃岐うどんや亀城庵のこれからをたっぷり聞きました。

綾歌郡宇多津町「亀城庵 (きじょうあん)」~藤井社長が語るうどんグローバルと讃岐うどんイノベーション~

ーー「讃岐うどん」は一杯の芸術作品。

小麦粉と塩と水、それに職人が鍛えて打つことで、元々の小麦粉からは考えられないような独特の食感が生まれます。

これに出汁をかけて、各々好きな具材を乗せて食べる。まさに、讃岐うどんは一杯の芸術作品です。

現在、讃岐うどんが全国的にスタンダードになっているのは、偉大な先人たちの日々の積み重ねのおかげ。この大きな功績があるからなんです。

※「讃岐うどんは材料×技術×スピリッツでつくります。大切なのはスピリッツ。魂ですよ」と藤井社長。

 

 

 

 

ーー香川県のうどん「讃岐うどん」を広めたい。

香川県は「うどん県」と言われたり、自ら言ったりしていますね(笑)。

讃岐うどんは香川県が誇るべき食文化です。

もっともっと世界中に広まって、世界中の人々が身近に食べられるグローバルフードになりうる可能性を秘めた料理です。

私たち世代は、先人が確立してくださった讃岐うどんをもっともっと世界にも広めていかないといけません。

※藤井社長著書「図解 不況でも繁盛するラーメン・うどん・そば店の教科書」も好評発売中。

 

 

 

 

ーー讃岐うどんの歴史を世代で分類。

私が元々は設計畑の人間です。

讃岐うどんを振り返るとき、各世代をVer.として分けて分類しています。それを簡単に解説しますね。

まず、明治維新以前を「さぬきうどん0世代」。

明治維新後を「さぬきうどん1.0世代」とします。

明治維新後の讃岐うどんの製法は完全手打ちです。

「土三寒六常五杯」と言われていたのは、この頃です。この頃の、小麦の製粉は全て水車製粉です。うどん発祥の地「綾南(りょうなん)」は沢山の水車小屋があり、水車で製粉を行っていた製粉屋がありましたね。

続いて第二世代の「さぬきうどん2.0世代」。

時代的には1950年以降(第二次世界大戦後)~1975年頃です。いわゆる「かけ」しかなかった時代に新しい調理方法が発明されました。「ざる」や「釜揚げ」が誕生しました。第ニ世代では、打ち立てや茹でたてのうどん本来の美味しさを楽しむことが始まった時代です。

「さぬきうどん3.0世代」は1976年から2000年です。

第三世代は「生醤油(きじょうゆ)」や「ぶっかけ」等、うどんに濃いだしを直接かけて食べることが定着し、うどん自体の鮮烈な食感を楽しむ食べ方が大成功した時代です。私たち大和製作所が製麺機業界に最後発で参入したのもちょうどこの頃なのです。

そして、2000年以降である「さぬきうどん4.0世代」。

製麺機が大活躍する時代。製麺機なしの、うどん店が考えられない時代となりました。代表がはなまるうどんや丸亀製麺です。どちらも非常に短期間で、国内の店舗展開に成功しました。製麺機が表舞台に出るようになった時代でもありますね。

うどんの店舗数の大幅な減少が続いているのに関わらず、うどん業界全体の市場規模は増加するようになりました。

要するに、現在のうどん店市場は勝ち負けがはっきりした、弱肉強食のサバイバル市場となったわけです。

※写真は須崎食料品店さんのうどんです。

※シンプルな食べ方はうどん本来の美味しさや食感を楽しめる。

 

 

 

 

ーーうどん業界もついに第五世代へ。

ついに業界も第五世代、「さぬきうどん5.0世代」に突入しました。

第五世代は、アフターコロナの時代に通用するうどん店のあり方を示すビジネスモデルが必要です。インターネットもこれだけ一般化し、販促の手段も増えました。情報が錯綜する中でコロナウィルス後の世界を各自がどう進んでいくかということです。

私の意見ですが、美味しくない店やサービスの悪い店はもちろんですが…。うどんを食べて、お客様が価値を感じない店は厳しいのではないかと思います。

当社の場合も必要なことは色々ありますが、お客様視点で強い特長を持ち、独自の価値を見出しながら、健康志向(ビーガン対応等)やエンターテイメントの要素も持ち合わせて、高い生産性も維持しないといけません。

これまでの常識が通用しない、生き残るのが難しい時代。

それが第五世代が直面する時代だと感じています。

※「アフターコロナは世界が変わる。うどん業界もイノベーションが必要なんです」と藤井社長。

 

 

 

 

ーー日本食のグローバルフード「寿司」。

日本食の中で、寿司がすでにグローバルフードです。

海苔巻きは通常、海苔をご飯の外側に巻きますよね。当然、見た目は黒色になります。ところが、欧米人にとって黒い色の食べ物はありえないんですよ。食べ物の色ではないということです。

アメリカのカリフォルニアで一世風靡したカリフォルニアロールを例に取ります。カリフォルニアロールは海苔をご飯の中に隠している。これが、見た目も華やかで人気が出ました。革新的な食べ方で一大ブームとなり、寿司が世界中で受け入れられる要因となったわけです。食べ方でイノベーションを起こしたんです。

※写真はカリフォルニアロールです。

※現在では世界で様々なカリフォルニアロール。「寿司」がイノベーションを起こせた、きっかけのひとつ。

※写真は寿司職人と外国人です。

※外国人にも受け入れられた「寿司」。讃岐うどんがグローバルフードとなる日は…。

 

 

 

 

ーー「寿司」が世界に広まった理由。

寿司が世界に広まった、理由は食べ方でイノベーションを起こしたこと。

もうひとつが寿司マシーンの普及です。

要はシャリロボットです。このマシーンの普及のおかげで、加速度的に世界に広まりました。職人がイチから、世界各地でコツコツと手作業で広めたわけではないんですよね。グローバルフードになる条件には、機械というハードウェアが必須です。

元々、一人前の技術を持った職人となるには、それ相応の時間がかかりますから。一定期間内に一定以上の水準の料理を作ろうとするとシャリロボットのようなものが必要なんですよ。

※写真はスーパー真打です。

※写真は大和製作所の製麺機。寿司ロボットが「寿司」をグローバルフードに押し上げたようにグローバル化には機械が欠かせない。

 

 

 

 

ーーグローバルフードとなった「ラーメン」と「讃岐うどん」の違い。

中国からうどんと同じように伝来したラーメンは日本中で認知され、瞬く間に世界中で受け入れられました。

これはなぜか?ということなんですよ。ラーメンも食べ方でイノベーションを起こしたんですね。豚骨ラーメンや味噌ラーメン等の様々なバリエーションが出来たこと。

つまり、ラーメンは何でもありなんですよ(笑)。

何を入れても、何味にしても、どんな麺で作ってもラーメンはラーメンとして成立しているんです。

讃岐うどんとラーメンを比較すると、料理として成立する制約が多いですよね。

「讃岐うどんはこうあるべき」

という要件的なイメージがかなり先行しています。讃岐うどんが讃岐うどんであるべきという制約条件が実は多いんです。

※写真はラーメンのイメージです。

※ラーメンは受け入れられれば勝ち。美味しければ、何味のラーメンであろうと認められます。

 

 

 

 

ーー「讃岐うどん」と「蕎麦」は似ている。

「うどん」の他に日本的な料理のイメージのある「蕎麦」。

蕎麦は美味しく作るための難易度が非常に高い、技術的にも難しい料理です。

また、「蕎麦とはこういうもの」という制約条件が多く、いわゆる「美味しい蕎麦」と認められるまでの判定が、厳しいんですよね。蕎麦と讃岐うどんも立ち位置が非常に近いですよね。

基本やセオリーから少しでも外れると、認められない風潮が今でもあるような気がします。

伝統は伝統として、しっかりと継承する。

その中で、我々のような讃岐うどんに関わるものが、勇気を持って、色々なうどんを創造したり、新しい食べ方や業態に挑戦していかなければいけません。偉大な先人がそれを成し得てきた歴史がありますから。

讃岐うどんブームと言われるムーブメントを掘り下げると、必ずと言って良いほど、うどんの新しい食べ方が出現しています。食べ方でイノベーションを起こしているんです。ざるうどんや釜揚げがそうです。

※写真はそばのイメージ写真です。

※技術的に難しい印象が先行する蕎麦。蕎麦とうどん、どちらが先にグローバルフードとなるのか。

※写真は山内うどんさんの写真です。

※讃岐うどんが讃岐うどんであり続けることが非常に難しい現代。香川県民の日常である讃岐うどんは不滅なのか。

 

 

 

 

ーー丸亀製麺の躍進。

現在、世界で成功しているうどんの企業は丸亀製麺です。

丸亀製麺は機械化を進めて、店頭で実演と出来立てのうどんを提供することで大成功しました。

現在はアメリカやヨーロッパはもちろん、宗教で食べ物に制限のあるインドネシアでも成功して、世界中で広まっていこうとしています。

丸亀製麵の躍進というのは、グローバル化には良いことだと思います。

ただ、業界自体を見ると、イノベーションは起きていません。

讃岐うどん或いはうどんがグローバルフードになれるかどうかは、世界でイノベーションを起こせるかどうかですね。

※「地元、香川県からうどんイノベーションを起こす、うどん屋や企業が出てほしい」と藤井社長。

 

 

 

 

ーーアフターコロナの「食」。

世界ではSDGsやビーガンがスタンダードになりつつあります。

となると、動物性のものは料理に入れられませんから。

讃岐うどんの出汁のいりこも、ビーガンの方々は食べられないです。讃岐うどんがグローバルフードを目指すなら、いりこを使わなくてもよい等のイメージ的な制約を可能な限りなくす方が良いと思います。

現在の世界の「食」の流行を牽引しているTOPレストランは料理で「お客様の人生を変える」と言われています。

シンプルに料理の美味しさの感動と、もうひとつは体に良い、食べて健康になるということです。感じる美味しさも口だけでなく、健康的な食材が体中に染み渡る…そんな体全体で感じる美味しさだからこそ、世界のTOPレストランは「人生を変えるレストラン」と言われています。

香川県は糖尿病患者が全国上位ということですが…。それは讃岐うどんが美味しいから、食べすぎるんですよね(笑)。

もちろん、讃岐うどんを出汁まで、全て飲み干すほど、毎日食べすぎると体に良くないですよ(笑)。

良くないと言いますかね…食べ過ぎると、それ相応の運動をしないといけませんね。

食べ過ぎると体に良くないという、イメージは讃岐うどんが、今後グローバル化するためには大きな障害になる可能性がありますね。

※「讃岐うどんはまだまだ進化出来ますよ」と藤井社長。

 

 

 

 

ーー「讃岐うどん」のイノベーション。

当社を含め、ぜひ地元香川県の店や企業が、現在の讃岐うどんにイノベーションを起こすべきだと思っています。

香川県のうどん屋でセルフでうどんを注文して、好きな揚げ物を乗せて食べることは本当に美味しいです。間違いのない美味しさです。

しかし、これからは健康にも配慮しないといけない時代が来ています。

健康に配慮したコンセプトの讃岐うどん店やメニューが香川県内でもっと出てきても良いはずですね。

ある時から、讃岐うどんはレジャー化してしまいました。日本全国に広まったきっかけとして、レジャー化というのは非常に良かった。ただ、レジャー化して、少しだけ残念なこともあります。

香川県のうどんである「讃岐うどん」。

レジャー化してブームになり、店の数が急激に増えた時期もありました。

その中で伝統や讃岐うどんの原理原則を真に理解した、うどん屋さんは意外に少なかったかも知れません。

讃岐うどんの原理原則をしっかりと捉えたお店がイノベーションを起こせたとしたら、香川県にとって、一番良いことなのかも知れません。もちろん、日々の経営もありますから、理想だけでは難しいところです。

イノベーションも結局は日々の小さな改善の積み重ねからしか、生まれませんから。

当社も同じです。

出来るだけ、同じ場所にとどまらず、個人としても企業としても、うどん業界をもっとよくするためには…と色々考えて行動しています。YouTubeも遊びの側面もありますが、挑戦しています(笑)。良いといわれることは、まずは自分でやってみないと。誰も後には続いてくれませんからね。

※写真は亀城庵の創業メンバーです。

※亀城庵の創業時の風景。最初は美味しいうどんを振舞いたい気持ちだけではじめられたそう。

 

 

 

 

ーー目指す先は「讃岐うどん」のグローバル化。

創業して45年になりますが、同じくらいやっている方がどんどん少なくなっているので寂しいですね。

自分はあと20年は現役でやりたい。常に新しく挑戦できることを探しています。

先ほどの話にもありました、蕎麦にもチャレンジしています。

新蕎麦の季節は10月です。夏の蕎麦は美味しい旬の時期ではないのですが、父の日に新蕎麦の香りのする蕎麦を発売します。香りが飛ばない蕎麦です。色々と私どもも挑戦していかなければいけませんから。

※途中、讃岐うどんの「コシ」についてもご教授頂けました。藤井社長ありがとうございます。

 

 

 

 

ーー「食」へのこだわり。社食はオーガニック。

会社とは人です。人が会社を良くも悪くもします。

私たちは「食」のビジネスを生業にしております。

美味しくて防腐剤や添加物を使わないのが亀城庵の「食」へのこだわり。そのためには社員の食事も大切です。

全国各地から取り寄せる無農薬の野菜を中心に化学調味料は一切使っていません。そんな料理を社員にも日常で触れてほしいので、社員もパートもアルバイトの人も食べられらます。それに、ウチで働いてくれている人たちには、健康で長生きしてほしいですから。

美味しいものを食べると自然と幸せになりますよね。従業員も幸せになってほしいです。

後は初心を忘れずにね。丸亀城のお堀端の自宅でうどんを打ち始めたのが、はじまりですから。そのスピリットというか気持ちは常に持ち合わせていたいです。

※「社員が喜んで楽しく働ける会社でもありたい」と藤井社長。長時間、ありがとうございました。

※進化を続ける藤井社長の魂がこもった讃岐うどんが食べたい方は亀城庵さんへ。まずはお試しセットがオススメ。是非ご賞味ください。

 

 

亀城庵のうどんのお求めは亀城庵丸亀店・宇多津店でお買い求めください。

 

 

 

亀城庵(きじょうあん) 株式会社 讃匠
住所 〒769-0203 香川県綾歌郡宇多津町浜三番丁37番4
電話番号 0120-45-2860
営業時間 9:00~17:30 ※休みは土・日・祝日
公式サイト https://www.kijoan.com/

この記事を書いた人

アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/

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