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坂出市富士見町「日の出製麺所」〜名店が振り返る讃岐うどんブーム〜

2020.05.25

行列の出来る製麺所「日の出製麺所」。

今回は三代目の三好修さんに讃岐うどんブームや昼の食事営業をはじめたきっかけ等々を取材しました。長年、讃岐うどん業界を牽引する名店の讃岐うどんに関する色々なお話です。

坂出市富士見町「日の出製麺所」〜名店が振り返る讃岐うどんブーム〜

――日の出製麺所の創業。

1930(昭和5)年の創業となります。

私の祖父が高松市から、ここ坂出市に超してきての起業でした。この場所が徳島県の貞光への街道沿いにあり、当時としては交通量の多い立地で食に関する業種であれば、商売にも困らないだろうという判断だったと聞かされております。香川県であれば、うどん屋が良いだろう判断があったのかも知れませんね。

※写真は日の出製麺所の代表取締役三好さんです。

※「戦中戦後の食糧難の時代を乗り越えてきた、祖父の苦労は計り知れません」と三好さん。

 

 

 

ーー初代から2代目の代替わり。

父に代替わりしてからも様々なことが起こりました。

1965(昭和40)年頃に坂出市番の州エリアに工業団地が出来まして、そちらの食堂向けの社食用うどんの発注も貰えまして、かなり忙しかったですね。

ですが、その後の1974(昭和49)年のオイルショックや「冷凍うどん」の登場は地元製麺所にとって、本当に大きな変換期を迎えることになりました。このタイミングで製麺所をやめたところも多かったように思います。ウチは経営も順調そうに言われることが多いのですが、実はずっと苦難の連続なんですよ。

※写真は「日の出製麺所」です。

※戦争をもくぐり抜けた香川県でも希少な製麺所「日の出製麺所」はまさに讃岐うどんレジェンド店。

 



 

 

ーー肌で感じた「讃岐うどんブーム」。
1988(昭和63)年の瀬戸大橋の開通で大きく様変わりしました。

当時はお中元といえばビールや素麺でした。その頃から、香川県のお土産として「讃岐うどん」が選ばれるようになりましたね。いわゆる「讃岐うどん」ブームの到来を感じました。

地元タウン情報誌で紹介された讃岐うどん巡りは、本当に凄い熱気でした。さらに1990年代後半には、全国のマスコミ等に紹介され、県外からの観光客が飛躍的に増えたことを覚えています。

※写真は「日の出製麺所」の三好さん。

※「いつもどおり朝開店すると、いきなり長蛇の列で驚きの連続だった讃岐うどんブーム」と三好さん。

 

 

 

ーーお店で讃岐うどんを振る舞うきっかけ。

讃岐うどんブームの影響もあり、ウチの讃岐うどんをお店で食べたい、食事したいということを何度も言われておりました。ですが、お客さんへの満足な対応ができる自信もなかったものですから、お断りしておりました。

※写真は「日の出製麺所」のうどんです。

※おいしい豆腐は葱と生姜で食べるように。日の出製麺所さんの讃岐うどんも同じように何もつけず食べて頂きたい。

 

 

 

――今でも心に残る学生さんの残念そうな表情。

ある時、県外の学生さんが「日の出さんのうどんを食べさせて欲しい」と急に来て、懇願されましてね。当時はお店でうどんを出してませんでしたし、時間も遅かったのですが…遠方からはるばると言うこともあり、特別に食べて貰いました。
しかし、その時のうどんは作ってから時間が経っており、その学生さんが美味しくなさそうに食べられたんですね。その時の残念そうな顔が今でも忘れられません。せっかく遠方から来て頂いたのに、出来立ての美味しいうどんを食べさせてあげられなかった…という申し訳ない気持ちで一杯になりました。それが、昼の食事営業のきっかけです。

※写真は「日の出製麺所」さんの店内です。

※とある学生さんの一言で、日の出製麺所さんのうどんがお店で食べられるように。

 

 

 

ーーお昼の1時間だけ店内でうどんを食べられるように。

2001年12月からお昼の1時間だけ営業するスタイルをはじめました。

当初はうどん玉だけを出し、袋入りの出汁をかけて食べてもらっていました。うちは製麺業が主ですので、本業に差支えないようにすることを前提としています。その中で、美味しい讃岐うどんを提供することを考えた結果、製麺所の一角に小さく飲食スペースを設けました。

※写真は「日の出製麺所」さんのうどんです。

※開店前には地元の方や観光客で行列が出来る「日の出製麺所」さんのうどん。

 

 

 

ーー色々な方々の支え。

お店でうどんを食べて貰うスタイルに慣れていない頃「せっかく遠くから来た人には喜んで帰ってもらった方がいいでしょう」と近所の方々が葱や生姜を無償で提供してくれました。

また、坂出の商店街にあった讃岐うどん店からは丼やイスを頂戴しましてね。本当に嬉しかったですし、今でも大切に使っています。お付き合いというのは本当に大切にしなければいけないと痛感しましたね。

※写真は「日の出製麺所」の三好さん。

※「ご近所さんや近隣のうどん屋さんには本当に助けてもらった」と三好さん。

 



 

 

ーーおいしい讃岐うどんの秘密。

美味しい讃岐うどんは素材の良さをどこまで引っ張り出せるかだと思います。

それぞれ好みがあり、明確に「これ」という答えはありません。気温や湿度などを考慮して、毎日違う環境の中で練り方、寝かし(熟成)、打ち方や延ばし方にゆで方等…。すべての工程でどれがベストの方法なのか。讃岐うどんというジャンルは今でも日々勉強です。

※写真は「日の出製麺所」さんのうどんです。

※味はもちろん、美しい麺線も確認できる目で見ても美味しい「ひや」。

 

 

 

ーー讃岐うどんづくりで大切なこと。

素材である「小麦」の良さを存分に引き出すことが大切です。

皆様に「美味しい」と喜んでいただけるうどんを作ることが仕事であり生業です。うどんづくりで大切なことは「うどんをつくることが好き」であることだと思います。

私も今でも、毎日小麦粉を触ることが大好きですからね。これが讃岐うどん店として、長く続ける秘訣ではないでしょうか。

※写真は「日の出製麺所」の三好さんです。

※「小麦粉の袋を開ける瞬間が、毎日の楽しみのひとつです」と三好さん。

 

 

 

ーー小麦粉へのこだわり。

「究極」「地粉」「豪州産」の3種類のうどんをおすすめしています。常連さんも「究極」だけしか注文しない方もいらっしゃいます。毎日食べる、私でも「今日は豪州産が食べたいな」「地粉が食べたい」とその日の気分で変わりますから。それだけ、讃岐うどんは奥が深いんですよ。

毎日食べて頂ける常連さん向けに小麦のバリエーションは必要だと思います。

※写真は「日の出製麺所」さんのうどんです。

※取材後には「豪州産(ASW)かけ」を頂きました。美味しくないはずがありません。

 

 

 

ーー「小麦粉」と言っても色々。

例えばコーヒー豆にも南米系、アフリカ系やブレンド等々の産地によって酸味や苦みなど特徴があります。小麦粉も同じなんです。さらに小麦の部位によっても味や風味が異なりますから、本当に奥深いんですね。

当然、小麦も同一品種でも採れた畑や袋毎に全て違いますから。その小麦粉の違いを毎日感じるだけでも、楽しいもんですよ。

※写真は「日の出製麺所」のうどんです。

※三好さん曰く「2020年のものは過去最高の出来だった、『さぬきのゆめ2009』」の「かけ」です。

 

 

 

ーー最後に一言お願いします。

ここ坂出の土地で皆様のおかげで90年目を迎えることができました(※2020年4月現在)。

お客様に出来立ての讃岐うどんを食べて頂き、喜んで貰うことがお客様への最高の恩返しだと思います。常に努力を惜しまずに全力で頑張っていきたいと思います。末長く、お客様から愛される讃岐うどん店でありたいですよね。



 

日の出製麺所
住所 〒762-0046 香川県坂出市富士見町1-8-5
電話番号 0877-46-3882
営業時間 食事/11:30~12:30  ※ラストオーダー12:30までに並べば食べられます  ※状況によって11:00頃から営業する場合もあり 店頭販売/9:00~17:00
公式サイト http://www.hinode.net/about

この記事を書いた人

カズシゲ・イリコセグロ(株)一誠社http://isseisha.co.jp/

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