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高松市前田東町「あづまうどん」〜讃岐うどんを継承するということ〜

2023.06.16

香川県の高松市内の最東端にある「あづまうどん」。

2005年にOPENして、地元客を中心に口コミで人気の香川県内でも指折りの繁盛店です。

昔ながらの中太麺は老若男女から支持され続けています。

二代目店主の藤井大剛さんにうどん作りやこだわりについて、お話を伺いました。

 

高松市前田東町「あづまうどん」〜讃岐うどんを継承するということ〜

ーー創業までのお話。

創業は2005年で私で二代目となります。

先代である父がはじめまして、12年程前に代替わりして私に変わりました(※2023年6月現在)。

父は元々は大工職人で、この建物も父がいちから建てました。

職人気質で昔気質の人なので口数も少なく、うどんづくりについて、教えてもらうことはほぼありませんでしたし、褒められることもなかったですね。

うどんづくりについても、親子で面と向かって言葉を交わした記憶もないと思いますよ(笑)。

創業当時もタウン誌から火がついた、いわゆる讃岐うどんブームの余韻が残っていて、それで父も行けるだろうということで、うどん屋を始めたようです。

当時は、今より多くの新しいうどん屋さんが出来ていた頃でした。

※画像は高松市のあづまうどんさんのうどんです。

※あづまうどんさんの「かけうどん」。もっちりとした食感と確かな弾力は普遍的な美味しさが味わえます。

※画像は高松市のあづまうどんさんの店主です。

※お忙しいところ、にこやかに取材に応じて下さった店主藤井さん。

 

 

 

 

ーー先代から引き継ぐ。

父がうどん屋を始めて、経営も少しづつ軌道に乗り始めた頃には年齢が60を超えていました。後々の体力的なことや毎日来て下さっている常連さんのことを考えると、自分が継ぐ方が良いなと思って継ぎました。

私も会社員でしたから、それなりに葛藤がありましたよ。

やっぱり、うどん屋さんで食べていけるかなという不安はありました。

現在は、父も母も悠々自適までは行かないかもしれませんが、それなりにゆっくり出来ているので、自分はこれで良かったかなという風に思います。

父親からは、うどんづくりは手取り足取り教えてもらっていませんが、器用さには自信がありました。父の作業を目で見てやってみて、自分でコツを掴む作業が好きだったんでしょうね。

※画像は高松市のあづまうどんさんです。

※「あづまうどん」さん、店名の由来は高松市最東端の場所に位置することから。

※画像は高松市のあづまうどんさんです。

※眼前に広がる田舎風景と一緒に食べるうどん。讃岐うどんが香川県の生活食であることを改めて感じられる場所です。

 

 

 



 

 

 

ーーうどんづくりのこだわり。

昔は店舗内でうどんを作っていましたが、お客様も増えて店内の作業場では手狭で間に合わなくなりました。現在は自宅の一角を改造して、うどんを作る部屋を作って、そこでうどん作りをしています。

うどんづくりは毎日、天気も温度も湿度も違いますからね、本当に難しいです。

今日のうどんの出来が最高ということは中々ありませんが、自分自身で納得できる範囲内でかつ、お客様に提供できる品質の範囲中で、日々全力でつくり続けています。

うどんづくりについては、父のうどんづくりを変えることはありません。

自分の好みで、うどんの太さや水分量等を大きく変えて…ということはないんです。とにかく、出すべき品質の許容範囲の中で最善のものを出すことを大切にしています。

温度変化の激しい季節は難しいんですよ。逆に日中通して、極端に暑いとか寒い方が私はうどんづくりにおいて、対策はしやすいように思います。

※画像は高松市のあづまうどんさんです。

※撮影当日は大雨の日。湿気が多く、生地も水分を吸って調整に気を遣う一日だったようです。

※画像は高松市のあづまうどんさんです。

※「毎日、自分の手や肌感覚でうどん生地の状態が分かるようになるまで、数年は掛かりました」と藤井さん。

 

 

 

 

ーーうどんづくりで大切なこと。

同じ小麦粉の量で水分量、塩分量を同じにして作っても、季節や日々の温度で違いますから、うどんづくりは本当に難しいです。

私の中では、毎日の品質を一定に均一化することに尽きます。毎日、同じ条件下で作ること自体がないですから。

その中で、自分が納得できるうどんを作るために日々、変化する環境でどう対応するかということだと思います。

気をつけているところは、最初の材料を混ぜ合わせる手合わせの際、小麦粉と水の分量を間違うと厳しいです。後々の工程で取り返しがつかないので、気をつけています。

夏場はうどんが柔らかくなりやすいので、伸ばしすぎないようにしています。生地が細くなりすぎると二度と太くはならないので、その限界点は本当に気をつけています。

とにかく、日々の対応につきます。

※画像は高松市のあづまうどんさんです。

※加水少なめのあづまうどんさんのうどん。状態にもよりますが、茹で上げる時間も18分前後と長めにとるそう。

※画像は高松市のあづまうどんさんです。

※うどんへ余計な力を加えると茹で上がり後の出来栄えにも影響します。いかなる工程も手は抜けません。

 

 

 

 

ーーおいしいうどんとは。

おいしいというのは、結局はお客様が決めることですね。

最近はSNSやネットの口コミが主流です。

一つ言わせて頂けるなら、一度だけの来店で、ここのうどんはこうだと決めつけられるというのは寂しいですよね。

うどんの出来栄えは天気や素材、お店の状況など色々な要因が絡み合います。

お客様自身も、その時の感情や機嫌、お腹の空き具合もあると思いますし、食べた時の感情がおいしいという評価に紐付くことが多いですよね、人間ですから。

また、うどん屋にも状況がありますから。当日の気温や湿度が難しい場合は、正直こちらも納得度ギリギリの出来栄えの日もありますし、混雑している時など状況は色々です。混雑していて、イライラした状態で待たされて食べたうどんは、味の評価以外の感情も入ると思います。

うどんづくりやうどん屋という職業は作り手側でどうしようもない、不確実な要素が大きいんですよ。

ですので、たった一度のワンシーンを口コミで切り取られるのは辛いです。それは悪いことだけでなく、良いこともです。初めての一度の食事で

「最高の美味しさだ」

と絶賛されてもプレッシャーですしね(笑)。

ぜひ、一度だけでなく、何度か食べて頂いて、当店のうどんや他のうどん屋さんの味を判断して頂ければ嬉しいなとは思います(笑)。特に悪いコメントは良いコメントよりも拡散されやすいですから、ぜひ何度か食べにいらして頂きたいです。

これは、どちらのうどん屋さんも感じていらっしゃると思います。

※画像は高松市のあづまうどんさんのうどんです。

※小麦粉と水と塩のみ。だからこそ、うどんづくりは奥が深い。

 

 

 

 

ーー出汁のこだわり。

出汁づくりについても、先代の時代から変えてません。

極力、出汁は煮立たせないことですね。沸騰させると水分が飛んで辛くなるので沸かさないことです。カツオや昆布等を入れてますが、出汁のベースとなるのはカツオです。

お客様からよく

「出汁変えた?」

と言われますけど、変えていません(笑)。

そういう場合、考えられるのは出汁をとる食材の状態ですね。カツオにしても出汁の出方が良い時も悪い時もありますから。カツオ節を火にかけた際の出しの出方は同じ分量、同じレシピで作っても、カツオ節の状態で違いますからね。

後はお客様の体調もあると思います。

※画像は高松市のあづまうどんさんのうどんです。

※カツオ出汁が香る老若男女に愛される出汁は間違いのない味。

 

 

 



 

 

 

ーーおすすめメニュー「肉ぶっかけうどん」。

僕は賄いの「肉ぶっかけ」を毎日食べてますから、オススメです(笑)。

あとは、うどんの麺は冷たいものが美味しいかなと思います。

うどん本来の食味や弾力を味わえるかと、お客様から熱い系のご注文を頂いても、心の中では冷たいうどんをオススメしています(笑)。

とはいえ、「かけうどん」が基本で注文の数も多いですから。寒い時期は熱々の「かけうどん」で体を温めてほしいです。

※画像は高松市のあづまうどんさんのうどんです。

※店主藤井さんも賄いで毎日食べている「肉ぶっかけ(冷)」。ぜひ実食で。

※画像は高松市のあづまうどんさんのうどんです。

※たっぷりの牛肉とうどんを引き立てる、ぶっかけ出汁も美味しい。

※画像は高松市のあづまうどんさんのうどんです。

※冷たいうどんがうどん本来の風味や食感を楽しみやすいそうです。冷系メニューを一度食べてみてください。

 

 

 

 

ーー先代が考案した「釜かけうどん」。

先代が始めた、ひと味違ったメニューが「釜かけうどん」です。

釜揚げにかけ出汁をかけて食べるメニューで、完全に茹で上がっていない麺をあえて食べるメニューですね。

麺の中心部が完全に茹で上がっていない状態で、かつ冷水で締めないですから。麺の中心部に小麦粉の粉感や生感が感じられるのが面白いと思いますよ。

父も周りのお店が「釜かけうどん」をやっているを知らなかったんじゃないですかね。父自身も、釜揚げにかけ出汁をかけて食べるのが好きでしたから、昔からメニューにしています。

※画像は高松市のあづまうどんさんのうどんです。

※先代がメニュー化した「かまかけうどん」。釜揚げの麺をかけ出汁で食べる至極のメニュー。

※画像は高松市のあづまうどんさんのうどんです。

※完全に茹で上がってはいない麺。エッジが立ち、麺の存在感が引き立っています。

※画像は高松市のあづまうどんさんのうどんです。

※冷水でしめていないため、釜揚げのヌメリ感も感じられます。「かけうどん」とは違うおいしさはぜひ実食で。

 

 

 

 

ーー業界を取り巻く厳しい状況。

父から引き継いでから、小麦粉や出汁などの材料も分量も変えていません。

もちろん、毎日の調整はしていますけどね。

最近は、原材料費から人件費に光熱費が全ての価格が上がっていますので、どうしても売価に反映しなければいけません。厳しいですね。原材料の価格も一度に上がるのではなく、3ケ月毎に少しづつ値上がりする感じですのでね。少しづつお客様の反応を見ながら、可能な限り売価に反映させて頂くしかないです。

飲食業に限らず、どちらの企業様も厳しい状況ではないでしょうか。

※画像は高松市のあづまうどんさんのうどんです。

※茹でる前の状態のうどんは溢れ出る心地良い弾力感。しっかり茹でることが変わらないおいしさの秘密。

 

 

 

 

ーー二代目として。

個人的には、うどん屋にしても、企業にしても創業した人が一番すごいと思っています。

0から1と2から3の差を比較しても。数字で見ると同じ1なんですけどね、難易度は圧倒的に違いますよ。

仮に今後、自分がどれだけ美味しいと評価されるうどんを作ろうが、どれだけ繁盛しようが創業者である父に勝てることはないと思います。

そもそも、父が創業してなければ、今のこの店は存在していないわけですから。

ですから、私は父の作ったうどんや伝統を守っていくことが全てだと思います。

優秀な二代目や三代目の方がいらっしゃいますが、やっぱり初代がいないと存在していないわけです。2代目以降は増えるか減るがですが、創業はあるかないか、存在するかしないかです。

全然違います。

※画像は高松市のあづまうどんさんです。

※元大工のお父様が作られた梁が剥き出しの店内。独特の雰囲気の中でうどんを楽しめます。

 

 

 

 

ーー最後に一言。

少し太めでモチモチした麺とカツオ出汁が強めに効いた出汁がお好きな方は当店のうどんが合うと思います。

私は賄いで「肉ぶっかけ」を食べていますので、そちらもオススメです。

ご近所さんからお預かりしている、野菜の無人販売も軒先でしてますので、お気軽にお越しください。

※画像は高松市のあづまうどんさんです。

※「父が築き上げた伝統を守り続けたい」と二代目藤井さん。お忙しいところ、ありがとうございました。

※画像は高松市のあづまうどんさんです。

※軒先にある野菜の無人販売所。野菜は近所のおばちゃんが置いていかれるそうです。

※画像は高松市のあづまうどんさんです。

※ご近所様とも良好な関係が見えます。タイミングが合えば、お値打ち価格で手作り野菜が食べることが出来ます。

 

 



 

 

 

あづまうどん
住所 〒761-0322 香川県高松市前田東町340−1
電話番号 087-847-6111
営業時間 11:00〜14:00 ※休みは水曜日

この記事を書いた人

アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/

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