善通寺市金蔵寺町「長田in香の香」 ~食べた人を虜にする魅惑の釜あげダシ~
善通寺市金蔵寺町にある「長田in香の香」さん。
名物は代名詞ともいえる「釜あげうどん」です。
休日ともなれば県内外から多くのお客様が訪れ、行列ができるほどの人気店です。
今回は、二代目店主の宮本将成(まさしげ)さん、女将さんでお母様の憧子(とうこ)さんにうどんづくり等、たっぷりとお話をお伺いできました。
善通寺市金蔵寺町「長田in香の香」~食べた人を虜にする魅惑の釜あげダシ~
ーー憧子さんに聞く、名店 「長田うどん」からの独立。
長田うどん(まんのう町)は昭和27年に私の叔父さんが始めた店なんですよ。
最初はお店でうどんを食べさせていなくて、玉の卸しだけでした。その後、私が家でいてヒマをしていたので「手伝いに来い」って言われて。私が店に入った当時はもう、釜あげうどんで有名になっていました。
子供たちが中学や高校の時だったので、うどんに係わり出したのは大分年が行ってから。それまではうどんや料理屋の経験は全くありませんでした。
うちのダシは長田にいた時に叔母さんから受け継いだものです。
叔父さん夫婦には子供がなかったかですから。
その後、色々ありまして、同じく長田で働いていた主人と一緒に独立したわけです。
その時は、60歳過ぎていたので、うどん屋をするつもりはなかったんですけどね、最初はここでオープンする予定ではなくて、金倉川の東側の土地に手付金まで払っていたんですよ。
そしたら、その土地の持ち主の人から
「やっぱりお店はお大師さん(第76番札所金倉寺)の近くの方が良いのでは」
と言われたんです。それで急遽今の場所になったんです。
ここは金倉川の伏流水が豊かで井戸から良い水が出たのもあって、結果的に良かったんですけどね。
オープンは平成14年。
ちょうど讃岐うどんブームの真っ盛りでした。
オープンの時は、前の日から徹夜で店の前に並んで待ってくれているお客さんがいたんですよ。びっくりしてこれは何かしなければと思って、急いでご飯を炊いておにぎり握って配りました。
あの日は仏滅だったから開店をお昼12時過ぎにしたのに、よく待っていただいたと感謝です。
ーー将成さんに聞く、「うどんづくり」。
実は小さい頃は釜あげが苦手で、天ぷらうどんとかの方が美味しいと思っていました。
食べ物の関係の仕事もしたことがなく、店を継ぐつもりがないどころか極端に言えば逃げてました。
うどんやダシ作りはもちろんですが、意外に難しかったのが釜あげ麺を箸で持ち上げること。
熟練のお婆さんが一度に何本も掴んでいるので簡単に見えるんですけど、滑って掴めないんですよね。
力加減をマスターするのに結構かかりました。
その後、約8年前に親父が足を骨折して引退し、今に至るわけです。
ーー憧子さんに聞く、店名の由来。
最初は「香の香」だけにしようと思ってたんです。
主人が萩の花にまつわる言葉だって言って。響きもきれいで「釜上げうどんは香川の香り」でちょうどいいなと。
けれどもやはり、長田の先代から受け継いだダシで勝負しないといけないと思って「長田」を入れました。
「in」は主人がよく見ていたテレビの「なんでも鑑定団」から。
出張鑑定ってあるでしょ?
「出張鑑定団in香川」みたいな。あれを見て私が付けました。
ーー多くの人が注文する名物「釜あげ」。
「冷やしうどん」もあるけど、夏でも7割ぐらいの人が「釜あげ」を頼みますね。
でも、一年中冷やしを食べるお客様もいるんですよ。「釜あげ」以外もご注文頂いても、楽しむ幅が増えるかも知れませんね。
ーー将成さんに聞く、裏メニュー「釜玉」。
メニューに書いてないんですけど、実は「釜玉」もできるんです。
そればかり食べるお客さんもいらっしゃいますね。
「うどんは釜あげで食べたら、美味しいように作ってるんですか?」
って聞かれるんですけど、特に意識したことはないんです。この作り方しか知らないから。
受け継いだ作り方を変えもせず、新しい機械を使うでもなく、ずっと。
生地は前の晩に錬って翌日使っていますが、毎日営業しながらも順次仕込んでいます。
そうでないと後半麺がなくなっていまいますから。
小麦粉は昔からオーストリア産100%です。今は日清の「白椿」ですね。やっぱりオーストリア産は安定してるので使いやすいです。
ーー試行錯誤のうどんづくり。
長田では機械は使ってなかったから、こちらでも機械を使わず手切りと足踏みでやっていたんですが、店が忙しくなりすぎて、主人が腱鞘炎になってしまった。
踏むのも辛くなって、作るのが到底間に合わなくなったので機械を入れました。それ以外は変わっていません。
長田でいた時に「さぬきの夢2000」が出て、香川県が「使ってくれ」って持って来たんです。
それで少しずつ湯がいてお客さんに食べてもらったら「お前、これはいかんぞ」って言われました。
両方食べ比べてもらったら「やっぱり従来の分でなかったらいかん」と。
今の「さぬきの夢2009」もブレンドしたら大丈夫かも知れないけど、そもそもそれを試す時間もないですし。
ーー憧子さんに聞く、先代から受け継がれる釜あげダシ。
私が叔母さんから受け継いだ長田のダシができたのは、高松出身の料理研究家・土井勝さん(息子さんは料理研究家・土井善晴さん)のアドバイスがあったと聞いています。
作り方は昔から同じ。イリコを前の晩から水に浸して、毎朝炊いています。大量に作らないと同じ味にならないんです。それと火力も大事です。
ここの店をする前に、自宅でダシを作ってみたんですけど、その時も同じ味にならなかった。家庭のコンロでは火力が足りないですから。
その後、店の厨房で作ったダシも何か違うかったんです。
材料や火力以外にも、道具を使いこなさないとダメみたいで。
ダシは釜あげも冷やしも同じもので、熱いか冷たいかだけなんですけど、熱い方がまろやかになっていると思います。
冷やしのダシは取ったそのままだけど、熱い方は湯せんするからその違いかも知れませんね。
ーー将成さんもおすすめのダシ。
特に変わったものを使っているわけでないし、材料も持ち帰りダシのボトルに書いてあるんですけど「同じ材料で作っても同じ味にならない」と言われますね。
店のメニューにはないんですけど、このダシで素麺を食べると美味しいんですよ。
この前は明石焼きを付けてみたんですけど、これも美味しかったですね。
あのダシは何にでも使えますから。お店で出していてる炊き込みご飯もあれで炊いています。
それとダシが入ってる徳利は徳島の大谷焼。結構割れるんですが、最近焼き物用の土が取れなくなっているそうで、注文してもなかなか届かないんですよ。
ーーお馴染みのダシを入れる器について。
最初は現在の大谷焼だけではなくて、白いのとか色々あったんですけどね。ダシを徳利に入れたり、持ち手に電線を巻いたのは長田の叔父です。
電線なら濡れても大丈夫で、なにより丈夫ですから。最終的に今みたいな形にしたのは、うちの主人ですけど。
高松の屋島にある「わら家」さんに同じような徳利があるのは、わら家の加藤さんいう人が長田で修業していたからなんですよ。ダシもよく似ているでしょう?
ーー人気のサイドメニュー「おはぎ」。
うちのご飯物には、おにぎりやお寿司以外に「おはぎ」があるんですけど、あれを食べるのは女の人ばかりじゃないんですよ。意外と男性も多いんです。
若い人も年配の人もみんな、おはぎを食べながらうどんを待ってくれてる。おはぎの甘さがダシの塩辛さと合うんですかね。ちなみに、あのおはぎは琴平の「松浦」さんから仕入れています。
私が長田でうどんの配達に行ったお店に、松浦さんがおはぎを卸しに来てたんです。
それが美味しかったので
「うちにも持って来てくれる?」
って頼んだ。
それからずっと卸してもらっています。
赤飯も松浦さんのですよ。
ーー開店20年を迎えて。
うどんブームになって、1人前を何人もで食べるお客さんが来るようになったので、苦肉の策でダシを1人100円もらうようにしました。
ダシを作るのには思う以上にお金がかかるんですよ。
でもこっそり多めにダシを使っちゃう人もいれば「多く使ったので100円払います」って言ってくれる人もいますから。まあ人それぞれですね。
ーー継続していくために。
うちの店は家族経営ではなくて人が多いので、同じクオリティのうどんを出すためにスタッフの力量を揃えるのは大変ですね。釜あげうどんなので、タイミングがかなり重要ですから。こればかりは覚えてくれるまで、私が細かく見て指導するしかないですね。
オープンして20年が経ち、これだけお客さんがついてくれていますから、きちんとテンションを保って行けるように、長く続けて行ければと思っています。
長田in香の香 | |
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住所 | 善通寺市金蔵寺町1180 |
電話番号 | 0877-62-5921 |
営業時間 | 9:00〜15:00 ※新型コロナウィルス対策で短縮営業中 ※休みは水•木曜(祝日の場合は営業) |
公式サイト | https://www.kanoka.jp/ |
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この記事を書いた人
アユム・スカシヒット(株)一誠社http://isseisha.co.jp/
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